EU委員会、APSの申請受付を事実上終了


APSの実施状況

 EU委員会は、豚肉価格が昨年後半から低下し続けていたことから昨年12月
9日、約4年ぶりに豚肉の民間在庫補助(APS)の実施を決定し、その申請を受
け付けている(「畜産の情報」海外編2003年2月号参照)。

 この対策の開始後約2カ月が経過した2月6日現在における申請状況は、関係
団体の推計によれば、以下の通りとなっている。

APSの申請状況

・申請された豚肉の量

  全体で、約10万3千トン。

・国別内訳(受理された量に占める割合)

  デンマーク   :48%
  フランス    :12%
  オランダ    :11%
  イタリア、ドイツ :8%
  ベルギー    :5%

・保管期間

  保管期間については、ほとんどのものが5カ月間の申請を行っている。

APSの申請受付、事実上終了

 こうした中、EU委員会はこのAPSの申請受付を一時停止する決定を行い、2
月13日のEU官報において公告を行った。この決定により、このたびのAPSの申
請受付は事実上終了することとなる。

 今回の決定の理由としては、低下傾向で推移していた豚肉価格が、APSを開
始した昨年12月上旬以降、枝肉100キログラム当たり124ユーロ(15,872円、1
ユーロ=約128円)弱で推移していることから、低下傾向に歯止めがかかった
と判断したと考えられる。

 今後は、EU委員会がAPSの申請受付を終了するため、2月18日に開催が予定さ
れている豚肉管理委員会に対し、受付終了日を定める規則案を提出することに
なると関係団体は見ている。

 なお、APSの対象となった豚肉については、EU域外への輸出のためであれば、
2カ月間の保管期間を過ぎたものから、事業者の判断により輸出することが可
能となっている。

ロシアが輸入食肉について関税割当制度を導入

 ロシアは、本年1月下旬、豚肉および牛肉は本年4月1日から、鶏肉は同年5月
1日から、輸入関税割当を適用する指令を制定したと関係団体が伝えている。
それによれば、豚肉については、関税率15%(現行と同率)を適用する枠を1
年間で45万トンとし、これを超えるものについては関税率を80%とする内容と
なっている。関係団体の推計によれば2002年におけるロシアの豚肉の輸入量は
60万トンであることから、低率の関税が適用される枠を45万トンとする今回の
関税割当制度の実施により、同国へ豚肉輸出を行っている関係国の対応が注目
される。

 EUにとってロシアは、豚肉輸出の重要な市場の1つであるが、近年豚肉の生
産を拡大しているブラジルがロシアへの輸出を増やしているため、EUの占める
割合は減少している。2002年上半期におけるEUのロシアへの豚肉輸出は、約18
万トン(EUの豚肉輸出に占める割合は24.2%、第1位)、金額にして約1億6千7
百万ユーロ(同12.5%、第2位)となっている。

 なお、ロシアが関税割当制度を導入する理由については、国内畜産の振興の
他、国内保護政策の実績を作ることによりWTOへの正式加盟の際の条件を有利
にするための準備等と言われている。

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