構造改革が進む中東欧加盟候補国の食品産業
GDPの4.2%を占める食品産業
EU委員会は2月18日、「中東欧加盟候補国の農産物・食品流通における構造
改革の進展(注)」と題するレポートを公表した。これは、中東欧諸国の専門
家から提供された情報を基に取りまとめられたものである。このため、同レポ
ートの内容は、必ずしもEU委員会の公式見解を反映したものとはいえないが、
中東欧諸国の食品産業の現状および問題点を簡潔に整理したものとなっている。
その概要は、以下のとおりである。
中東欧諸国の食品産業は、計画経済から市場経済への移行初期における大幅
な生産量の落ち込みから、近年ではかなり回復してきている。90年代後半の生
産額を見ると、ほとんどの国で大幅な増加を示している(ただし、バルト諸国
およびスロバキア共和国では、98年のロシア経済危機の影響で低い伸びにとど
まっている)。食品産業は、実質国内総生産(GDP)の4.2%(2000年、以下同
じ)を占めるなど、この地域の経済の中で重要な役割を果たしている。また、
製造業における付加価値額のうち、食品産業の占める割合は、19.9%に達して
いる。
食品産業における就業者数は減少
食品産業における就業者数は、全体の3.2%を占める。しかし、90年代後半
の動きを見ると、ほとんどの国で減少しており、リトアニア、エストニアなど
のバルト諸国やルーマニア、ブルガリアでは減少が特に顕著である。こうした
動きは、食品産業への新規参入がある一方で、倒産や合併などにより、業界全
体としては構造改革が進展した結果であるとみられる。
また、製造業における就業者数のうち、食品産業が占める割合は14.8%とな
っており、製造業の付加価値額に占める割合と比較して低くなっている。言い
換えれば、食品産業の労働生産性は、他の製造業と比較して高いことが伺われ
る。
所有形態の変化(民営化と外国からの投資)
それぞれの国で異なる方式によって、民営化が進められた。一般的には、小
規模の国営企業は、直接払い下げられるか入札により売却された。大規模の国
営企業は株式会社に転換された後、株式が売却された。株などの売却に当たっ
ては、農業者や国営企業の労働者・管理職に優先権が与えられる場合が多かっ
た。農業者は、特に、乳業、製粉、食肉などの農畜産物の1次加工部門を所有
することとなった。こうした、農業者へ優先権の付与は、(混乱した経済状況
の中で)原材料を確保する狙いがあったものとみられる。
一方、食品産業への外国からの投資も増加している。ポーランドでは、製造
業への外国からの投資のうち、24%が食品産業への投資であった。
外国からの投資が向けられる対象は、タバコ、飲料、菓子、食用油精製、乳
製品などの高付加価値製品の製造業で、こうした産品は輸出向けの割合が大き
い産品でもある。
このレポートでは、EUへの加盟を控える中東欧諸国の食品産業には、法規制、
技術水準、衛生規則に関して、更なる前進が必要であると指摘している。
(注:レポートの原題は、「Key Developments in the Agri-Food Chain and
on Restructuring and Privatisation in the CEE Candidate Countries」)
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