豪州で牛肉の消費者向け格付けをめぐり論議
大手食肉処理業者が新聞広告で問題提起
豪州では消費者のための牛肉の格付け制度としてミート・スタンダード・オ
ーストラリア (MSA:消費者が牛肉を購入する際の判断の目安を提供する
ことを目的とした業界主導の格付け制度)が1999年に開始された。大手食肉処
理加工業者のビンダリー・ビーフ(Bindaree Beef)社(豪州食肉家畜生産者
事業団(MLA)の2000年食肉処理業者ランキングで第5位)は2月、主要農業専
門紙上で、消費者のための牛肉格付け制度を、全国的な法制度として整備すべ
きとする意見広告を出した。
同社はその広告で、牛肉の国内消費量の減少傾向に歯止めをかけるためには、
全国的な格付け制度の導入が必要であると次のように主張している。
・国内市場で販売される牛肉の約4割は経産牛から得られたものである。
・MSAは、良いステーキ肉を識別するもので、悪いステーキ肉を特定するわけ
ではないことから、制度は中途半端である。
(なお、MSA開始当初、その格付け率の最終目標は約7割(経産牛などを除く
肉牛供給量におおむね相当)といわれていた。現時点の格付け率は明らかで
はないが、その目標にはほど遠い状況とみられる。)
・豪州は、米国で米農務省(USDA)により行われているような格付け制度がな
いため、1人当たりの消費量について米国と比較すると最近20年間の減少率は
大きい。
豪州:82年49.4kg→2001年33.7kg(▲31.8%)
米国:82年48.0kg→2000年45.4kg(▲5.4%)
また、同社は、現在検討中の食肉諮問委員会 (RMAC:食肉産業界の政策決
定機関)による食肉格付けに関する報告が手間取っている点も問題視している。
MLAは同社の主張を批判
MSAを実施する豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)のクロンビー会長は、同社
の主張は見当違いの誤った情報に基づくものとした上で、「多くの肉牛生産者
が干ばつと闘っている最中にこのような人騒がせな主張をすることに失望した」
と批判している。
また、同会長は、MSAを通じて豪州産牛肉の品質の向上が図られており、輸
出市場だけでなく、国内市場規模も金額ベースではこの4年で33%も成長して
いることから、MSAが国内消費の面で貢献しているとしている。
さらに、1人当たりの消費量が低迷しているとの主張に対しては、「重要な
ことは、単に量だけではなく、量と価格の両方を満足する需要を作ることであ
る」としている。
農相は業界で解決すべきとの見解
昨年の対米輸出枠配分問題と同様、行司役を求められた形のトラス農相は、
牛肉の格付け問題は業界で解決すべき問題であり、ビンダリー社の広告は、不
当に連邦政府に狙いを定めたものであるとしている。
同農相は、2001年の中ごろに食肉格付けに関する検討を行うようRMACに指示
したが、その作業は順調に進んでおり、3月中旬には完成する見込みであるこ
とから、RMACの報告がこの問題の解決の糸口になることを期待している。
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