消費者への浸透が滞る乳製品管理規程   ● シンガポール


飲用牛乳の輸入が増加

 シンガポール国際企業庁が1月末に公表した輸出入統計によれば、2002年の
同国の飲用乳輸入量は、前年比18%増の3万6,126トン、金額にして約3,800万
シンガポールドル(約2億6,600万円:1シンガポールドル=70円)に達した。
飲用乳の内訳は、乳脂肪分1%以下の低脂肪乳が同77%増の6,521トン、乳脂肪
分が1%を超え6%以下の普通牛乳(生乳を含む、以下同じ)が同10%増の2万9,
605トンとなっている。

 輸入相手国別では、低脂肪乳は豪州が約94%となっており、1キログラム当
たりの平均単価は1.63シンガポールドル(約114円)であった。普通牛乳では、
約56%が豪州産、約35%がニュージーランド産、約5%がタイ産となっており、
1キログラム当たりの単価は、それぞれ0.83(約58円)、0.93(約65円)、1.4
(約98円)シンガポールドルとなっている。豪州産、ニュージーランド産は、
液状バルクまたは21キログラムの冷凍梱包で船積み輸送されたものをシンガポ
ール国内で小売用に小分け再包装しているのに対し、CP明治社が主体のタイ産
は原産国で既に小売用のプラスチック・ボトルに小分けされたものが輸入され
ており、この違いが単価に反映されているものとみられる。なお、同国に隣接
するマレーシア・ジョホール州には、飲用乳を年間千トン程度生産する能力を
有するスス・レンブ・アスリ社があるが、シンガポール政府は生乳の衛生上の
品質が劣ることなどを理由に95年から輸入を禁止している。


コールド・チェーン管理規程を制定

 同国は、国土が狭あいであることから、国内の酪農家は2戸、搾乳牛60頭程
度であり、年間生産量約200トンと推計される生乳は、全量を自家処理して飲
用として契約出荷している。このように、飲用乳はほぼ全量を輸入に依存して
おり、同国にとって衛生品質の向上による消費者保護が大きな課題となってい
る。

 このような状況を受け、同国で食品の規格を所管しているスプリング・シン
ガポール(旧生産性・規格庁)は、昨年9月6日、消費者保護と品質保持期限の
延長による資源節約を目的として、「牛乳・乳製品のコールド・チェーン管理
に関する実施規程」(シンガポール規格CP95:2002)を制定した。規程の制定
に先立ち、コールド・チェーンの現状認識や温度条件などの設定のための実地
検証試験が2年間にわたって行われ、NTUCフェアプライス生協などの大手スー
パーマーケット4社とF&N食品社などの牛乳・乳製品メーカー4社がこれに参加
した。スプリング・シンガポールは、この規程の適用によって、従来18日間だ
った品質保持期限が24日間にまで延長されたことについて、大きな成果が挙げ
られたとしている。


消費者の役割も規定

 同規程には順守義務はないものの、農場段階の搾乳やバルククーラーの設定
温度、輸入に係る輸送容器から商品陳列棚の設計に至るまで各種条件が規定さ
れている。同規程では、保管・販売中の温度について、飲用乳製品は4℃以下
と規定している。また、消費者に対しても、牛乳類は買物の最後に購入し、購
入後直ちに帰宅して冷蔵庫に入れることを求めており、消費者にもコールド・
チェーンの一部としての役割を担わせているのが特徴である。

 品質保持期限の延長は早々に行われているものの、マスコミを含めて、この
問題に対する一般の関心は高いとは言えず、同規程の制定が地元一般紙に取り
上げられたのは制定からほぼ半年を経過した今年2月4日になってからのことで
あった。

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