◇絵でみる需給動向◇
EU委員会は2003年6月、EU15カ国における主要農畜産物の需給に関する中期 見通しを発表した。今号では、予測の前提条件と生乳需給に関する見通しを 紹介し、主要乳製品の需給見通しについては、次号で取り上げる。 EU委員会による農畜産物の需給動向予測の前提条件は、以下の1〜5の通り である。
1 政策については、現行のEU規則および2003年5月初めの段階で2003〜2010年 に実施することが決定されたものをすべて適用する。また、・拡大するEUの 21世紀の農業指針を示した「アジェンダ2000」に基づく共通農業政策(CAP) 改革案(6月に合意される前の2003年1月の規則案)・中・東欧等10カ国(注) の2004年EU加盟・2002年5月に成立した米国の「新農業法」―を考慮する。 2 今後の世界貿易機関(WTO)交渉の進展にもよるが、市場アクセスや輸出 補助金等のウルグアイ・ラウンド(UR)農業交渉におけるすべての合意事項 は、順守されると仮定する。また、UR農業合意は、2010年まで継続すると仮 定する。 3 EUが発展途上国や中・東欧等諸国と締結した貿易協定については、引き続き 継続するものとする(10カ国との貿易協定については、2003年まで)。 4 各種の統計データは、2003年5月初めのものを利用する。 5 経済成長率および米ドルに対する為替レートは、2002年12月と2003年5月 の経済情勢を基に2010年まで年平均2.6%、1ユーロ当たり1米ドルとする。
(注):キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、 マルタ、ポーランド、スロベキア、スロベニアの10カ国図 生乳の需給見通し
今回の需給見通しによれば、EUの生乳生産量は2004年にわずかに減少し、2006 年まで微増を続けるが、その後はまたほぼ横ばいで推移する。2010年の生乳生産 量は、2002年と同じ約1億2,200万トン、また出荷量は、2002年から0.6%増の1億 1,600万トンと予測されている。なお、今回合わせて発表された中・東欧等10カ国 を含めた予測では、生乳生産量は、2001年から2010年の間、約1億4,300万トン前 後で推移すると見込まれている。 また、乳用経産牛の飼養頭数は、毎年減少を続け2010年12月末は2002年と比 べて9.8%減の約1,784万2千頭、1頭当たりの乳量は2008年までは毎年1.5%前 後、2009年以降は1.0%前後増加し、2010年は2002年と比べて11.1%増の6,799 キログラムと見込まれている。
6月のCAP改革合意(詳細は本誌トピックス参照。)でEUの生乳生産割当(ク オータ)制度は、2014年度(年度は4月〜翌年の3月)まで存続することは、規 則案の通りに決定されたが、クオータの拡大については、規則案の「2004年度 から3年間0.5%ずつ拡大」から「2006年度から3年間0.5%ずつ拡大」と、その 実施時期が先送りされた。これが、乳製品の介入価格の引き下げ幅縮小などと 合わせて、今後EUの生乳生産にどのように影響するか、注目される。
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