EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○2010年の豚肉生産量は増加見込み


 EU委員会は2003年6月、EU15カ国における主要農畜産物の需給に関する
中期見通しを発表した。豚肉の需給見通しの概要は、次の通りである(需
給見通しを行う上での前提条件については、本誌需給欄の牛乳・乳製品
(EU)を参照)。

● ● ●2010年の生産量は1,863万5千トン● ● ●

 豚肉生産量は、域内消費や域外向け輸出の増加が見込まれることから、前回
(2002年12月)の見通しよりも上方修正された。2003年は、イギリスやフラン
スなどで2002年12月期の豚飼養頭数が減少したことから、豚肉需要が旺盛であっ
た2002年に比べて減少する。しかし、2004年以降は、毎年0.6〜1.5%台で増加し、
2010年の生産量は、2002年と比べて4.7%増の1,863万5千トンと見込まれている。

● ● ● 消費量は1,744万7千トン ● ● ●

 一方、消費量は、2007年を除いて着実に増加することが予想されている。EUの
食肉消費は、2000年の牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃により、牛肉に対する消費
者の不安から豚肉および鶏肉へのシフトが見られた。消費者の豚肉志向は、鶏肉ほ
どではないものの、今後も続くとみられている。2010年の消費量は、2002年と比
べて5.6%増の1,744万7千トン(1人当たりの消費量は、3.6%増の45.27キログラ
ム)と見込まれている。なお、牛肉消費については、回復することが見込まれて
いる(詳細は本誌需給編「牛肉」参照。)。


 今回合わせて発表された中・東欧等10カ国(注)を含めた豚肉需給見通しに
よると、生産量は2002年の約2,130万トンから2010年には約2,310万トンまで増
加、消費量は約2,000万トンから2010年には2,150万トンまで増加することが予
測されている。


(注):キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、
    マルタ、ポーランド、スロベキア、スロベニアの10カ国

● ● ● 輸出も輸入も2010年は最大● ● ●

 域外向け輸出量は、主要輸出先であるロシアで今年から関税割当措置が取られた
ことや同国への輸出をめぐってブラジル産などと競合することなどから、2003年は
減少することが予測されている。2005年以降は増加し、2010年は見通し期間で最
大の127万9千トン(2002年と比べると2.0%増)まで増加することが予測されて
いる。これは、域外最大の輸出先である日本や韓国向けなどの輸出が増加すること
や、ロシアの関税割当措置が解除されるとみられることを見込んでいるものと考え
られる。


 一方、域外からの輸入は、2002年以降、10カ国以外の中・東欧等諸国や米国、
豪州などからの輸入増加が予測されている。2010年の輸入量は、2002年に比べて
84.3%増の9万4千トンと大幅な増加が見込まれている。

● ● ● 穀物介入価格現状維持などが今後の域内豚肉需給に影響か● ● ●

 豚肉は穀物をベースとした産品であり、EUの豚肉生産は穀物生産と密接な関連
を有している。6月に合意した共通農業政策(CAP)改革では、穀物の介入価格は
現状維持、また、加盟国の裁量で穀物への直接支払いの一部を生産と関連した直
接支払いとすることなどある程度生産を刺激する措置が残された。こうしたこと
が、今後の域内豚肉需給に影響を及ぼす可能性がある。
◇豚肉の需給見通し◇

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