豪州、EUのCAP改革合意に不満


1月の改革規則案から後退した合意に批判集中

 豪州政府および農業関連団体は、EU農相理事会が共通農業政策(CAP)改革に
合意したことを受けて、それぞれ声明を発表したが、合意は今年1月にEU委員会
が公表したCAP改革案よりも後退した内容となっており、依然として不満であると
の見方で一致している。


 ベール貿易相は、今回のCAP改革について、全世界の農業者にとって前進である
と評価しつつも、より改革を重視した2003年1月の改革規則案を修正したことに
不満を示した。最終決定の詳細を見ていないと前置きしながらも、「1月の改革規
則案で示された価格引き下げ幅よりも縮小され、農業生産を切り離した単一の直接
支払いが実施される中で肉用牛部門の奨励金制度は、多少見直されるだけにとどま
った」と述べている。一方、農業分野で停滞しているWTO交渉については、「CAP
改革に合意したことから、EUはWTO交渉において大幅に改善した提案をするべき
である。EUの今後のWTOに向けた新提案には、市場アクセスの大幅な改善や輸出
補助金の段階的引き下げが含まれなければならない」と述べ、今後の進展に期待感
を示した。


 また、トラス農相はこの改革は失敗であると厳しく評価しており、1月の改革規
則案を修正した合意は、今後のWTO交渉での新たな議題とはなり得るが、交渉を
進展させる推進力にはなり得ないと述べ、ベール貿易相より悲観的な見方をしてい
る。

市場アクセス制限の撤廃も要求

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、トラス農相と同様に改革を厳しく非難し
ている。「家畜部門での助成金支払いの一部が頭数をベースに行われることから、
助成金を得ることを目的とした生産はなくならない」と述べ、EUの農業者に対す
る支払額が実質的に増加するとして、EUの改革を非難している。


 さらに市場アクセスについては、EUは引き続き制限を維持するとみており、「豪
州はEUにわずか7千トンの牛肉と1万8千トンの羊肉を輸出しているのみ。これ
は、EUが世界の最も大きな市場の1つであることに対し、ごくわずかな数量でし
かない。これらの数量の増加を保証することは豪州の牛肉と羊肉産業の優先課題で
ある」としている。さらに「WTO交渉では豪州政府にEU提案を拒絶するよう促す」
と述べ、EUに対し国内支持システムなどの改善だけでなく、市場アクセス制限の
改善を求めている。


 全国農業者連合(NNA)では、「わずかな変更で合意したEUのCAP改革は、
WTO交渉の進展の一助にはなる。しかし、依然としてEUは、農産物の生産と貿易
についてわい曲的な国内支持政策を維持したままでおり、今回の改革の合意にかか
わらず、さらに真の農業の改革が必要である」と述べている。

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