米国下院のWTO・FTAに関する公聴会開催される


米国下院はWTOおよびFTAに関する農業団体からの公聴会を開催

 米国議会下院農業委員会は、6月18日、農業関係団体からのWTOおよびFTA
に関する公聴会を開催した。公聴会には、全国肉牛生産・牛肉協会(NCBA)、全
国豚肉生産者協議会(NPPC)、全国生乳生産者連盟(NMPF)、ファームビューロ
ー(AFBF:全米最大の農業者団体)や全国鶏肉協議会(NCC)を始め各団体が意見
を述べた。WTOについては、農業委員会特別会合ハービンソン議長の農業交渉モダ
リティー案について、米国提案が十分反映されていないとするとともに、FTAにつ
いては、各団体の所管する農産物の輸入増が懸念されるFTAについてはこれに反対
するとの意見が述べられた。

 各団体の意見の詳細は以下のとおり。

全国肉牛生産・牛肉協会(NCBA)

 WTOについて、今次交渉が牛肉貿易の障壁を削減し、ウルグアイラウンドのよう
に輸出機会の大幅な増大が図られることを期待するとする。一方で、米国からの牛
肉の主要輸出国において意味のある関税の削減がなされるまで、米国への牛肉の輸
入機会を増大させることには賛成できないとした。また、米国提案を進展させるた
めの更なる努力を求めた。

 FTAについては、豪州とのFTAのように米国への牛肉の輸入数量を増加させるも
のについてはこれに反対するとした。また、米州自由貿易地域(FTAA)について
は反対しないとした。

 この他、EUのホルモン牛肉に対する措置をはじめとする衛生検疫措置問題の早
期解決を求めた。

全国豚肉生産者協議会(NPPC)

 WTO農業交渉を最重要課題とし、あくまで豚肉・豚肉製品の関税の相互撤廃を追
及する。諸外国の関税が高い水準にあり、特に、最大の輸出先である日本が差額関
税や関税の緊急措置により強力な貿易制限を行っているとした。具体的には、関税
削減の加速、関税割当枠の拡大、輸出補助金の撤廃、貿易制限的な国内支持の削減、
平和条項の廃止を求めた。

 また、FTAにおいても関税の相互撤廃を求めていくとした。特に、メキシコにつ
いて、アンチ・ダンピング(AD)や衛生検疫を濫用しており、北米自由貿易協定
(NAFTA)を一方的に再交渉しようとしていると批判した。

全国生乳生産者連盟(NMPF)

 ハービンソン議長案について、他の国の高い水準の関税を容認する一方で既に低
い水準となっている米国の乳・乳製品の関税の削減を求める最悪のシナリオである。
国内支持についても、EUが米国よりも明らかに高い水準からその削減を始めるこ
とを容認しており、現状の不均衡が改善されない。関税率の調和、輸出補助金の廃
止、米国が他の先進国との競争力を失うことのない形での国内支持の削減を引き続
き求めるとした。EUは地理的表示により保護を与える産品を拡大し、米国のチー
ズを始めとする乳製品の貿易を脅かそうとしている。表示や動物愛護のような事項
を最終的な合意に含めることを防ぐ必要がある。

FTAについては、豪州を除き歓迎するとした。

ファームビューロー(AFBF)

 ファームビューローは500万人を超える会員を有する全米最大の農業者団体であ
る。

 米国農業にとって輸出は重要な部門であり、米国農業は、海外マーケットの拡大
に努めているが、現在、多くの海外マーケットにおいて関税障壁や国内保護により
不利な立場に置かれ、フラストレーションが溜まっている。今次WTO交渉におい
て、ハービンソン議長案の内容(輸出補助金、国内支持政策、衛生植物検疫措置
(SPS)協定など)を検討した結果、この提案は受け入れられるものでなく、今後
も同提案を支持することはできないとした。昨年夏に出された米国提案は今後も支
持するものの、これを進展させるための努力を求めるとした。

 また、FTAにあっては、市場参入機会の拡大のための関税撤廃、SPS協定など非
関税障壁の分野の解決を原則として交渉を行うべきであり、各国との交渉における
センシティブ品目の取り扱いなどについて注視してゆくとした。

全国とうもろこし生産者協会(NCGA)

 アルゼンチンや中国の輸出量の伸びや2002/03年の輸出量が97/98年レベルま
で落ち込むとのUSDAの試算があるなど、取巻く環境は厳しい状況にあり、今後の
WTO農業交渉などの進展が死活問題になるとした考えに立ち、@関税障壁の削減
A貿易を歪める国内支持の削減B輸出補助金の撤廃・バイオテクノロジーを用いた
産品を差別するような貿易の技術的障壁(TBT)の廃止─の基本理念の達成に向けて
WTO農業交渉などの進展を支援とした。なお、米国提案については既に支持する旨
の正式表明を行っているところであり、3月のモダリティーが合意に至らず交渉が
進展しなかったことに失望し、メキシコカンクンでの進展を注視してゆくとした。

 また、FTAのうち、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)について、同国の
国内農家支援強化と輸入とうもろこしなどに対するセーフガード実施への動きにつ
いて、けん制するとした。

全国鶏肉協議会(NCC)、米国家きん・鶏卵輸出協会(USAPEEC)他

全国鶏肉連盟、米国家きん・鶏卵輸出協会、全国ターキー連盟およびバージニア家
きん連盟の4者は、米国提案を支持するとした上で、良くない合意をするくらいな
ら合意しないほうがましであると強気な姿勢を見せた。また、WTO農業交渉と平行
してFTA交渉を進めることを求めた。

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