EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○2002/03年度の生乳供給量は割当枠を約89万トン超過


● ● ● 課徴金の総額は約3億2千万ユーロ ● ● ●

 EU委員会は10月23日、2002/03年度(2002年4月〜2003年3月)のEU加盟15カ国の生乳供給量の速報値を公表した。これによると、生乳生産割当枠(クオータ)に対する生乳供給量は、89万4,111トン超過し、これに伴う課徴金が3億1,854万ユーロ(約410億9千万円:1ユーロ=129円)になった。

 EUの生乳生産は、84年から加盟各国別にクオータを定め、これを超過した分についてペナルティーとして生乳指標価格の115%の課徴金を課す制度となっている。この制度は、EUでの生乳市場の需要と供給のバランスを保つことを目的として導入された。当初は、5年計画でスタートしたが、その後数回延長され、本年6月に合意した共通農業政策(CAP)改革では、本制度は2014年まで継続することとなった。 

● ● ● 出荷クオータは9カ国、直接クオータは2カ国が超過 ● ● ●

 今回発表があった生乳供給量はクオータ制度の規定に基づき、毎年9月1日までに、各国がEU委員会に報告したものを取りまとめたものである。

 これによると、農家が乳業者へ出荷する「出荷クオータ」では、EU全体のクオータ1億1,774万トンに対し、生乳供給量は1億1,822万トンと約48万トン超過した。これをクオータの超過国だけで見ると、9カ国で85万3千トン、課徴金は3億389万4千ユーロ(437億2千万円)となった。これは前年を約7万8千トン上回った。

 最も多い超過となった国は、イタリアで、前年度を約23万トン上回る61万8千トン、課徴金2億2千万ユーロ(283億8千万円)とEUの超過全体の72.5%を占めた。イタリアは、クオータをここ10年で9回超過した常連国となっている。

 一方、農家が直接消費向けに販売する「直接クオータ」は、EU全体では、クオータを生乳供給量が上回らなかったが、国別に見ると、イタリアとオランダの2カ国が上回った。イタリアは、3万9千トン超過の課徴金1,382万ユーロ(17億8千万円)、オランダは、2,339トン超過の課徴金83万ユーロ(1億1千万円)であった。なお、課徴金は1トン超過につき、356.27ユーロ(4万5千円)である。

● ● ● 1農家当たりの生産量は増加 ● ● ●

 EU全体のクオータは、1億1,600万トン(99/2000年度)から、4年間で1億1,774万トンに増加した。この期間では、EU全体での酪農家数は、70万3千戸から56万戸と減少しているが、1農家当たりの年間生乳生産量は164トンから210トンと増加し、全体の供給量も増加している。これは改良や飼養管理技術の向上などにより1頭当たりの乳量が増加したことによるものと考えられる。


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