ブラジル南部パラナ州がGM作物の栽培、販売などを禁止


パラナ州がGM作物の栽培、販売などを禁止

 ブラジル連邦政府は9月26日、2003年に収穫され、生産者が独自に利用するために保管していた遺伝子組み換え(GM)大豆の種子の、2003/04年度の作付けへの利用とその収穫物の販売を承認する暫定令第131号(2003年9月25日付け)を官報に掲載した。この背景には、GM大豆を解禁する司法の判決が下されていない同国にあって、アルゼンチンと国境を接するリオグランデドスル州の生産者が今年もGM大豆の作付けに強い関心を示したことなどがある。

 一方、マットグロッソ州に次ぐ国内第2位の大豆生産州である南部地域のパラナ州で10月14日、同州におけるGM作物の取り扱いに関する条例案が州議会で可決され、レキオン州知事が10月27日、これに署名した。同条例は、同州で食料、家畜用飼料に向けられるGM作物の栽培、輸入、加工および販売などを禁止するとともに、国内最大の大豆輸出港である同州パラナグア港をGM作物の輸出または輸入のために使用することを禁じるものである。なお、この条例は公布日から発効し、2006年12月31日まで有効である。

 ブラジル政府の統計によると、2003年の大豆生産量は、マットグロッソ州が1,295万トンと最大で、次いでパラナ州が1,097万トンである。また、2002年に同国から輸出された大豆1,597万トンのうち509万トンがパラナグア港から出荷された。


同州は暫定令131号の適用外を申請する意向

 パラナ州農務局によると、今回の条例に従い、州内でGM大豆の作付け、販売などを行ったものは処罰されるが、現地報道によると、パラナ州の一部の生産者は、連邦政府に対し、GM大豆の作付けを認めるよう働きかけを行っている。GM大豆の作付け、販売を条件付きで認めた連邦政府の暫定令とこれに対峙するパラナ州政府の条例を巡っては、今後、法廷論争へと発展する可能性もあると報じられている。

 一方、連邦政府が発令した暫定令第131号第4条に「ブラジル農務省は、遺伝子組み換え体(GMO)の存在が認められないことが証明された地域を同暫定令の対象外とすることができる」と規定されていることから、パラナ州政府は、条例によるGM作物の栽培、販売などの禁止措置と並行して、州全域でGMOが存在しないことを証明した上で、同州が同暫定令の適用外と認められるよう農務省に対し申請をする意向があるとしている。しかし、州内にGM大豆の栽培に意欲的な生産者も存在することから、紆余曲折も予想されている。


州境や港湾施設で大豆の積荷を徹底検査

 現地報道によると、パラナ州政府は今回の条例案が州議会で可決された後、10月20日から、サンパウロ州、マットグロッソドスル州、サンタカタリナ州との州境に監視所を設け、州内に入る大豆の積荷に対して、非GM大豆の証明書の確認やGMO検査を行ったため、多くの輸送トラックが州境で立ち往生する事態が発生した。これに対し、マットグロッソドスル州政府は、同州経済に重大な影響を与えるとしてパラナ州の対応を強く非難した。一方、パラナ州政府は、連邦政府が発令した暫定令第113号(同暫定令は2003年6月13日に法律化された)により、2003年に収穫された大豆の取引には非GMOの証明書の提示が義務付けられたため、同証明書の不備な輸送トラックなどを通行禁止の対象としたとしている。

 さらに、パラナ州政府によると、州知事が条例に署名した後、パラナグア港では、同港のターミナルに積載されていた大豆を対象にGMO検査が実施されることとなった。10月28日に行われた検査の結果、一部の大豆からGM大豆が検出され、この中にはパラグアイ産も含まれていた。パラグアイ農務省によると、その後、当該大豆の取り扱いを巡り、パラナグア港の関係者とパラグアイの業界団体との間で話し合いが数回行われたが、11月12日現在、まだ結論は出ていないとしている。


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