全国農相会議、干ばつ対策見直しなど合意    ● 豪 州


干ばつ対策改善に向け公聴会開催

 連邦政府と豪州各州(準州を含む)政府の第一次産業大臣による、農林水産および食品産業の振興を目的とした「第一次産業大臣会議」が10月2日、パースで行われた。今回の会議では、@干ばつ全国会議の来年への延期と干ばつ対策に関する公聴会の実施A世界貿易機関(WTO)農業交渉ドーハ・ラウンドにおいて貿易障壁撤廃を求める現状の交渉姿勢の堅持BBSE対策強化の必要性C一部の州での牛に関する個体識別制度の義務化実施時期の1年間延期D生体家畜輸出における動物福祉の重視−などが合意された。主な議題と概略は次の通り。

○干ばつと気象状況と予測

  気象局から、最新の気象予測では全般的に平年の気候に戻りつつあるが、一部の主要農業地域は依然干ばつの影響下にあり、これらの地域ではかんがい貯水量の少ない状況が今も続いていると報告された。

  干ばつ対策については、今年開催を予定していた対策の改善を目的とした全国会議を1年延期し、代わりに全国農業者連盟(NFF)の代表者を構成員に含む公聴会を設けることが同意された。公聴会では、各地の生産者や農業関連業界から干ばつ対策に関する意見を聴取し、その結果を来年の全国会議に報告することとなった。全国会議での議論の結果は、各州や連邦政府の干ばつ対策立案の際に反映される。

  現在の干ばつ対策については、連邦政府と州政府における財源負担割合や干ばつによる例外的環境(EC)認定地域の評価認識の違いなどで問題が生じていた。トラス農相は会議の席上、干ばつ対策の見直しの必要性を強く主張し、今回設置される公聴会が「干ばつ対策改善の強い味方となる」と期待を表明している。

○農業貿易問題

  WTO農業交渉については、カンクンでの交渉決裂にかかわらずドーハ・ラウンドの下で多国間貿易システムの改善を求めることが重要であると強調された。また、今回の交渉の中で非関税障壁と主張された豪州の検疫制度については、病害虫や疾病から清浄な状態を維持するために、現状の制度を堅持する必要性が改めて確認された。

○BSE問題

  カナダでの牛海綿状脳症(BSE)の発生を受け、牛肉輸出産業界にとってBSE対策を強化する必要があることが同意された。具体的には、BSE発生時の対策の準備、サーベイランスプログラム、動物由来の肉骨粉の反すう動物への飼料給与禁止規則の遵守状況の確認等の強化を行う。また、伝達性海綿状脳症(TSE)清浄保証プログラムの開発を行うことが言及された。

○NLIS

  個々の牛に対して電子標識(耳標他)装着を行い管理する全国家畜個体識別制度(NLIS)の義務化実施時期を、クインズランド州、西オーストラリア州や北部準州については導入には時間が必要であるとし、2004年7月1日から05年7月1日に延期することとした。他の州は予定通り実施する見込みである(なお、ビクトリア州では既に義務化済み)。

○中東への生体家畜輸出

  最近豪州から輸出され、疾病が原因でサウジアラビアに陸揚げを拒否されたため、多数の羊が死亡したコーモエクスプレス号の事件が話題に上り、生体家畜輸出にあたっては、動物福祉に最大限配慮することが必要であると再確認された。

 その他、昨年行われた口蹄疫(FMD)発生の演習結果は、現在、政府機関で対処方法などについて評価・分析中であることが報告されるとともに、炭そ病発生時のワクチン確保、産卵鶏に関する福祉問題の再調査や連邦政府が許可した商業用GM穀物についての一般市場への導入可能性などについて検討された。


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