ASEAN首脳会議開催される       ● インドネシア


首脳会議への期待される成果と実情

 今回の会議の開催に伴い、日本、中国、韓国そしてインドの首脳が招かれ、東南アジア諸国連合(ASEAN)との経済協定の早期締結等について合意された。

 ASEANは、5億人の人口を抱えているが、その国々の実態は、大きな経済格差、多様な政治形態、文化、宗教など複雑な様相を呈している。しかし、今回の会議は何よりも地域としての一体感を優先させたものであり、地域経済の一体化によるメリットを計算した上での協調と言える。

 主催国インドネシアの主導で行われた会議では、安全保障、経済、文化等にわたる「協和宣言U」が採択された。ちなみに「協和宣言T」に当たる1967年の内容は米国と旧ソ連の冷戦対応であり、アセアンの情勢は冷戦終結を境に大きく変わった。

 今回の宣言で、インドネシアのメガワティ大統領は「歴史の分水嶺にある」と自賛している。少なくとも、アセアン全体として、2020年までの経済共同体構想(人、物、資金の移動の自由)を対外的に表明できたことは一定の成果と言える。


中国の台頭への警戒感と米国の関与

 今回の会議で目についたのは、中国への警戒感である。ある首脳の「巨象である中国の挙動は慎重に見極める必要がある」との発言は、通貨元の切り上げ要求を尻目にアセアンの従来の市場を自国市場へと塗り替えていく中国への警戒感を表している。

 一方、中国は「中国の世界市場に占める割合は5%にすぎず、世界のデフレ要因とは思えない」などと説明し、ソフトムードの演出に成功したと評されている。

 ASEANにとって米国は大きな市場であると同時に、米国にとってもASEANは大きな投資先であった。しかし、中国がこの立場にとって代わりつつあり、アセアンにはこの状況が今後も進むのではないかとの懸念がある。

 一方、米国は、他国との経済協定に関しては、「できるところから結ぶ」との方針であり、メンバー国の状況に格差が大きいASEANには当分各国ベースでしか対応できないのが実情と言える。


マハティール首相の引退式

 マレーシアのマハティール首相の引退を10月末に控え、今回の会議の一場面は同首相の引退セレモニーの様相を呈した。同首相はこれまでアジアの論客としてその強力なリーダーシップでASEANをリードしてきた。

 これに対し、ASEANの他の首脳の対応は、外交儀礼以上のもので、盟主なき同盟とも言われる今後への不安感を暗示させるものとなった。


今後のASEAN

 アセアンが名実ともに単一市場として機能するためには、少なくとも、現在進められているAFTA(ASEAN 自由貿易地域:原則2015年までに関税撤廃等)の実現が前提にならざるを得ない。

 一方、タイは既に中国と野菜果物の関税撤廃を行う他、日本に鶏肉等の関税撤廃を要求しており、メンバー国の対応スピードはまちまちである。

 また、別の先進メンバー国首脳の「われわれが先にタンゴを踊り出せは他も加わるだろう」との楽観的な発言は、ステップをためらう他のメンバー国への配慮が欠けているように見える。


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