米生乳団体、自主的な生乳生産削減プログラムを始動


CWTは計画をほぼ達成する形で始動

 米国最大の生乳生産者団体である全国生乳生産者連盟(NMPF)が7月3日に発表した生乳価格回復のための生乳生産削減等のプログラム(CWT;Cooperative Working Together)が当初の計画をほぼ達成する形で始動した。

 NMPFは参加者から徴収した6,000万ドル(約66億円、1ドル=110円)を財源に今後1年間で12億ポンド(約54万トン)の生乳生産の削減とそれによる100ポンド当たり35セント(キログラム当たり85銭)の乳価の上昇を目指す(「海外駐在員情報」通巻第586号参照)。

 NMPFは最近の乳価の回復(9月の乳価は前年同月比20.7%高の100ポンド当たり14.1ドル)については様々な要因が挙げられるが、CWTもその1つであるとしている。

牛群淘汰プログラム

 牛群淘汰プログラムについては、総削減目標数量の45%に相当する約25万トンの削減を目標としており、3万3千頭(全米の経算牛頭数の約0.36%)の淘汰を実施する。淘汰に際しては、全米を5つのブロックに分け、地域間でのバランスに配慮しつつ淘汰計画が立てられた。淘汰は2003年10月末までに完了する。淘汰に際しては、他農場への販売牛はプログラムの対象外とされるが、搾乳牛の月齢や乾乳中であるか否かは問われない。保証は搾乳牛の販売に対して行われ、平均保証価格は100ポンド当たり4.03ドル(キログラム当たり9.76円)。

生乳生産削減プログラム

 生乳生産削減プログラムについては、総削減目標数量の10%に相当する約5万トンの削減を目標としており、参加農家は当該農家における生乳生産量の10%以上を削減することが求められる。しかし、削減のための具体的な手法(淘汰、飼料や飼養管理の変更等)はあくまで参加農家の判断に委ねられる。

乳製品輸出支援プログラム

 乳製品輸出支援プログラムについては、総削減目標数量の35%に相当する約2万トンを目標とするが、現在、生乳価格は安定しているため実施していないただし、本年末以降には乳価が再び下降する見込みであり、プログラムを活用することとなる見込みであるという。

 また、総削減目標の残り10%については、上記3つのプログラム以外により削減を目指すが手法は特定されていない。

乳価の大幅な低落が農家のプログラムへの参加を後押し

 NMPFは今回の自主的な取り組みが、過去多くの同様の取り組みが失敗に終わったにもかかわらず成功した理由として、乳価が過去にない低水準(米国農務省経済研究所は2003年の生乳価格は2002年の100ポンド当たり12.19ドル(キログラム当たり30円)とほぼ同水準で推移すると予想しており、これは97年から2001年の5年間の平均を2ドル下回るとしている)となり、もはや政府による対策のみでは価格の回復が望めない状況にあったことを挙げる。このプログラムは、当初から全米規模で参加者から費用を徴収する継続的なプログラムとして提案されたものの、会員の合意を得る過程で、規模が実行可能なレベルまで縮小されるとともに単年のプログラムへ変更された。

 また、今回のプログラムには家族経営、大規模経営の双方が参加しているものの、将来的に有望な発展性のある大規模経営の積極的な参加が見られたことは特筆に値するとしている。なお、生産者の減少により今後このような取り組みが更に容易になるものと考えられるとしている。


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