タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○生産費は低下するも、輸出市場からの締め出しで苦境に立つ一般農家


● ● ● 一般ブロイラー農家の経営環境の悪化が続く ● ● ●

 タイ農業協同組合省によれば、2002年9月のブロイラー生産費は、前年同期
を約10%下回る1羽当たり49.2バーツ(約143円:1バーツ=2.9円)となってお
り、7〜9月の3ヵ月連続で前年同期を5%以上下回って推移した。生産費の約7
割を占める飼料費が同36バーツ(約104円)程度で安定的に推移する中、ひな
価格の下落が続いており、生産費を押し下げる要因となっている。

 一方、農家の出荷価格と生産費との差として算出した農家収益は、4月以降
マイナスが続いており、一般ブロイラー農家の経営状況は悪化の一途をたどっ
ているものとみられる。農家出荷価格は、卸売価格とほぼパラレルに推移して
おり、卸売価格と同様、4月に前月比約25%の大幅な下落となっている。この
ような大幅な下落は、3月にEU向けタイ産鶏肉から抗菌剤の残留が検出された
ことをきっかけに、大手インテグレーターが自社農場および契約農場以外から
の鶏肉の調達を手控えたことが影響しているとみられる。実際、12月には、業
界第4位のベタグロ社が、自社農場の拡大と契約農場の拡充により、一般農家
からの調達比率を従来の約50%から15%にまで削減していくことを表明してお
り、一般農家を取巻く環境はますます厳しくなることが予想される。

◇図:農家収益の推移◇


● ● ● 2003年の飼料輸入政策を決定 ● ● ●

 飼料価格の動向とこれに関連する国境措置は、ブロイラーの収益性に大きな
影響を与えるが、商務省飼料政策委員会はこのほど、2003年も前年の飼料輸入
政策を継続することを承認した。これによれば、大豆かすは、関税割当枠を設
定せずにすべての関税率を5%とするが、輸入業者は農業協同組合省と商務省
との間における合意事項に基づき、国産大豆の全量を、バンコク市場価格で1
キログラム当たり9.5バーツ(約28円)を下回らない価格で買い上げることが
義務付けられている。

 トウモロコシは、同国のトウモロコシの非収穫期に当る3月1日から6月30日
の間の輸入に適用される関税割当枠を5万4,411トンとし、枠内税率は20%だが、
枠外の輸入分は従価税73.8%に従量税1トンあたり380バーツ(約1,102円)が
加算される。魚かすは、輸入量に制限がなく、関税率15%が適用される。

 なお、今年1月1日からアセアン自由貿易圏(AFTA)の共通実効特恵関税(CE
PT)が完全実施されており、アセアン加盟国からの輸入の場合、大豆かすと魚
かすは各種制限なしに関税率5%で輸入することができる。しかしながら、ブ
ロイラー飼料の主要部分を構成するトウモロコシについては、センシティブ品
目としてCEPTの適用を留保していることから、CEPTの上限である5%を大幅に
上回る関税率が適用されており、国産トウモロコシの作況次第では、今年後半
の飼料価格が変動する可能性がある。

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