◇絵でみる需給動向◇
米農務省(USDA)がこのほど公表したレポートによると、当初、中国では20 01年12月の世界貿易機関(WTO)加盟により、トウモロコシの輸出は減少し、 輸入が増加すると予測されていた。これは、加盟に際して、トウモロコシの輸 出補助金の撤廃と585万トンの輸入割当枠が条件とされていたためである。輸 出補助金の撤廃は、2002年の中国の輸出競争力を低下させると見られていたが、 その予想を覆し、輸出は前年を上回るペースで増加した。2002年1〜10月は、 前年同期比73.1%増の841万7千トンとなった。 一方、輸入については、輸出量の1割にも満たない63万7千トンとなり、WTO 加盟1年目の中国は、依然として最大のトウモロコシ輸出国であると言える。
中国のトウモロコシ輸出は、米国におけるトウモロコシの生育状況の悪化と 不作の予測により、2002年7月から8月にかけて国際価格が上昇したことでより 勢いを増した。また、中国でのトウモロコシ生育状況は比較的良好であったこ とから、過去最大の豊作となると予測されている。 中国の輸出相手先を見ると、全体の輸出量の約5割を占めるのが韓国である。 9月時点での韓国向けの米国産価格は1トン当たり130〜140ドルであったが、中 国産は1トン当たり115ドル以下で取引された。このため、米国から韓国への輸 出は1〜8月の累計で前年同期比70%減と大幅に減少した。その他のアジア諸国 においても、供給先を価格が高騰した米国から中国にシフトしたものと見られ、 2002年7月以降、おおむね100万トン台の輸出が続いている。 ◇図:中国の輸出国別割合◇
中国が輸出を推進してきたのは、政府が抱えている在庫を減らそうとする狙 いがある。数年をかけてかなり減少したにもかかわらず、在庫は依然として大 量とされている。吉林省だけで2002年3月末時点には4千万トンの在庫があり、 これは同省の生産量の2年分に相当する。USDAでは、2000/01年における中国 の期首在庫を世界の在庫量の約6割を占める1億200万トンと推計している。2000 /01年中に2千万トン、さらに2001/02年に1千600万トンが消化されるものと 見込まれるが、依然として世界の在庫量のうち半数以上を中国が占めている。
WTO加盟による中国農業貿易への劇的で即座の影響は見られないことが徐々 に明らかになってきている。中国側では、輸出を継続させ、在庫量が維持でき る水準に下がるまでは、輸入を阻止しようとあらゆる戦略を練っている。 しかし、長期的には、WTO加盟は、世界市場に向けた中国のトウモロコシ部 門と畜産部門の統合とより効果的な生産の再構築に向けた圧力となるものとみ られる。また、輸出を支えるための補助金はいつまでも継続するにはあまりに もコストがかかるため、中国は、これらの経費を生産者への直接補助に切り替 えると見込まれている。
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