◇絵でみる需給動向◇
豪州酪農庁(ADC)によると、酪農家戸数は20年以上にわたって一貫して減 少し、2002年6月時点においても、前年比6.3%減の1万1,022戸となった。82/ 83年度と比較すると45.4%減と、20年間で半分近くにまで減少した。その一方 で、2002年6月の経産牛頭数は前年比3.9%と増加しており、91/92年度以降、 11年間の増加傾向が続いている。 2000/01年度は、2000年7月の酪農乳業改革(加工原料乳の価格補てん金と 飲用向け生乳の生産者最低価格の撤廃)の影響により、それまでは高値で維持 されていた飲用乳の生産者価格が下落した。そのため、飲用乳生産地域である ニューサウスウェールズ州を中心に離農が進み、酪農家戸数は、前年度比8.2 %減と大幅な減少を示した。この際、離農した農家が飼養していた経産牛を他 の酪農家が引き継いだことから、さらに規模拡大が進んだとされる。 2001/02年度についても、酪農家戸数の減少は続いている。酪農乳業改革で は、酪農家の所得低下分を補償する補償措置として酪農構造調整金が設けられ た。各酪農家の交付金額は、98/99年度の出荷実績に、飲用乳向け生乳が1リ ットル当たり46.23豪セント(約32円:1豪ドル=70円)、加工原料乳が同8.96 豪セント(約6円)を乗じて加算したものとされている。これは、8カ年に渡り 四半期ごとに支払われるが、交付金の受領後の廃業について規制されていない ため、銀行の特別ローンなどにより前倒しして受け取った酪農家などが、漸次 離農しているものと考えられる。また、2001/02年度の終盤になって乳製品の 国際価格が下落し酪農家の収益の減少が見込まれる一方、生産コストは上昇を 続けていることも減少の要因と考えられる。 2001/02年度の酪農家1戸当たりの飼養頭数を、改革が行われる以前の99/2 000年度と比較すると27.6%増と大幅に増加した。 ◇図:経産牛頭数と酪農家戸数の推移◇
一方、2000/01年度の生産者乳価は、飲用向け生乳と加工原料乳との区別が なく、1リットル当たり29豪セント(約20円)と前年度の飲用向け生産者乳価 を大きく下回る一方で、前年度の加工原料向けの乳価は上回った。2001/02年 度の生産者乳価は、好調な生乳生産と輸出金額の記録を更新した乳製品輸出を 反映し、前年度比13.8%高の同33.0豪セント(約23円)と大きく上昇した。 2002/03年度の酪農をめぐる情勢は、深刻な干ばつの影響により生乳生産の 大幅な減産が見込まれる一方、乳製品国際市場における価格が低迷するなど、 これまでの好況ともいえる状況から変化しており、今後が注目される。 ◇図:生産者乳価の推移◇
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