タイの鶏肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○1〜9月期の輸出状況と今後の見込み


● ● ● 年間では前年を上回る輸出量となる見込み ● ● ●

 タイ・ブロイラー加工輸出協会が公表した、2002年1〜9月期の冷凍鶏
肉の輸出量は、前年同期比9.9%増の約25万1千トン、同期の鶏肉調製品の輸出
量は、同8%増の約9万2千トンと、依然として前年を上回っている。なお、9月
の冷凍鶏肉の輸出量は、前年比で9.5%減となったが、これは、昨年9月の輸出
量が前年比43%の大幅な伸びを示したことによる。同協会は、本年3月にEUで
タイ産鶏肉に抗菌剤の残留が検出されたのを受けて、2002年1月に公表した同
年の輸出予測数量を冷凍鶏肉について約9%相当の3万トン、調製品については
約8%相当の1万トンをそれぞれの予測値から削減したが、10月以降、12月中旬
現在に至るまで、輸出量に大幅な低下をもたらすような出来事は起こっていな
いため、通年の輸出量は、協会の年当初見込みである冷凍鶏肉33万トン、調整
品13万トンと同程度かややそれを上回る水準に達するものとみられる。

 同期の輸出金額を見ると、冷凍鶏肉が前年同期比7%増の183億1千万バーツ
(約531億円:1バーツ=2.9円)、調製品が同6%増の117億4千万バーツ(約34
0億円)となっており、抗菌剤の残留問題により一時30%以上の価格下落を生
じていた冷凍鶏肉についても前年を上回る輸出金額となっている。


● ● ● ますます高まる日本のシェア ● ● ●

 輸出相手国別では、冷凍鶏肉、調製品ともに日本の比重が高まっており、前
年同期と比較すると、日本のシェアは、冷凍鶏肉で11ポイント、調製品で10ポ
イント上昇している。日本向けは、BSEの影響で鶏肉に代替需要が発生したと
みられる昨年末以降、中国など主要競争相手国における衛生上の問題等もあっ
て、大幅な増加を示してきた。1月の輸出量は前年同期比92%増の大幅な増加
となっており、徐々に落ち着きを取り戻しながらも7月まで同50%増以上で推
移してきた。9月は、同37%増となった。

◇図:地域別輸出状況◇


● ● ● 関税分類変更により、EU向けに新たな課題 ● ● ●

 EUは4月以降、タイ産鶏肉の毎個検査(全箱検査)を行っている。タイ政
府は、農業協同組合省畜産開発局(DLD)に対し、1億1,800万バーツ(約3億4,
200万円)を抗菌剤残留対策費として交付しており、その一貫として2002年10
月1日からの標準農家制度の施行に加え、DLDの発行する検査証明書を添付した
鶏肉からの残留抗菌剤の検出はありえないことになっている。これを受けて、
鶏肉輸出協会は、EUにおけるダブルチェックを廃止するか、少なくともサンプ
ル抽出率を従来並の3割に戻すよう要請しており、抗菌剤をめぐる事態も解決
に向かっている。

 抗菌剤残留問題が解決に向かう一方、タイ商工会議所によれば、EU向けの鶏
肉について、新たな問題が持ち上がっている。従来、EUの関税分類では、塩分
1.2〜1.9%に加塩された鶏肉を調製品に分類してきたが、7月28日以降、冷凍
鶏肉に分類するよう変更された。薬剤検査で荷揚げが1ヵ月程度遅延する上、
検査コストが上乗せされ、価格競争力が低下しているタイ産鶏肉の競争力がさ
らに低下することになっている。日本でも調製品と冷凍鶏肉とでは、税率に約
2倍の差があるが、EUでも同様に冷凍鶏肉の税率が調製品より大幅に高いもの
となっており、いわばグレーゾーンにあった当該品目の輸出業者にとっては大
きな打撃となっている。同会議所では、このような形でタイ産鶏肉がさらにEU
での市場を失うことを懸念している。

EU向けに輸出された鶏肉中、残留薬剤が検出された
サンプル数の推移(3月〜9月)

資料:農業協同組合省畜産開発局

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