豚コレラ防疫に関するEU加盟国の法律が発効


2001年12月の理事会指令の下、加盟国の国内法が整備

 EUでは、豚コレラの防疫に関する理事会指令(理事会指令2001/89/EC)が
2001年12月に発効した。EU加盟国は2002年10月末までに、この指令に基づいて
国内法等を整備することになっていた。

 指令においては、豚コレラに感染したすべての豚を淘汰することを基本とす
る撲滅対策は維持されるが、緊急時における加盟国の管理の元でのワクチンの
使用と野生のイノシシへのワクチンの接種を規定している。また、科学技術の
進展にかんがみ、「マーカーワクチン」の使用も規定している。マーカーワク
チンは、目下、開発段階にあるが、ワクチンを接種した家畜と自然感染したも
のとを区別するものである。


豚コレラの発生は、経済的損失と動物福祉の面で問題

 この指令は近年のEUにおける豚コレラ防疫上の経験を考慮したものである。
97年および98年に豚コレラが発生した際には、大量の家畜を殺処分し、廃棄せ
ざるを得なくなり、また、EU域外との貿易にも大きな障害を引き起こした。こ
のように、豚コレラの発生による経済的損失が非常に大きなものとなることが
明らかとなったこと、さらに、このような大規模な殺処分が動物愛護の観点か
らも問題を引き起こすことを踏まえたものである。

 この指令に基づいて国内法が整備され、豚の飼養密度が高い地域においては、
大規模な殺処分を避けるため、家畜衛生当局の管理等を条件に、緊急時のワク
チンの使用が認められる。また、野生のイノシシにおける豚コレラの発生が、
EU加盟国や加盟候補国における豚コレラ撲滅の障害となっている地域もあるた
め、野生のイノシシへのワクチン接種も導入されることとなっている。これは、
ドイツにおいてすでに実施され、実績のある狂犬病対策としてのキツネへのワ
クチン接種と似た方法を野生のイノシシに応用することとしている。


食品廃棄物の飼料利用も禁止

 また、この指令は、ケータリング業者などから出る食べ残しなどの食品廃棄
物を豚に給与することを禁止しているが、例外として、本年11月1日以前に、
すでに厳格な管理を行うことができる加盟国にあっては、当該月から4年間を
超えない期間に限って、食品廃棄物の飼料利用を認めることになっている。現
在、いくつかの加盟国から出されている要求について、EU委員会では審査を行
っているところである。なお、本年10月に出された「非食用向け畜産副産物に
関する規則」においては、一定の条件の下で、毛皮用家畜への食品廃棄物の使
用を認めている。

 EU委員会のバーン公衆衛生・消費者保護担当委員は、「EUにおける家畜の衛
生問題は非常に重要なことである。それは、健康な家畜が健全な食料をわれわ
れに提供してくれるためである。食品の安全と動物福祉の観点に加え、豚コレ
ラのような家畜の病気の発生は、経済的に甚大な損失をもたらすものである」
などとコメントしている。

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