ブラジル次期政権、貧困救済策を優先課題に
政策方針の中で貧困救済策の重要性を訴える
ブラジルでは10月27日、大統領選挙の決戦投票が行われ、野党労働党の
ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ名誉党首が当選した。左派政権の誕生で現
行の経済政策が変更されるとの懸念もある中、ルラ次期政権は、同国の経済の
安定を脅かすことなく、社会政策の1つとして「飢餓撲滅計画」と称した貧困
救済策を優先課題とする方針を明らかにしている。
同政権は、その政策方針をまとめた「政府計画」の中で、「ブラジルは、大
きな農業生産の潜在能力を持ち、大量の食料を世界に供給しているが、その一
方で、国内では満足に食料も買えず、貧困状態にある者が多数を占める」とし、
貧困救済策の重要性を訴えている。
この「政府計画」の中で、同政権がその貧困救済策を「飢餓撲滅計画」と称
したことは、国内外で反響を呼んでいる。また、「飢餓撲滅計画」は、農工商
業全般に関わる社会政策の1つであるが、今後の同政権による農業政策と密接
に関連する計画としても注目される。
全人口の約4分の1に相当する約4千万人が飢餓に陥る可能性と推計
同政権によると、ブラジルで飢餓を発生させる問題点について、富が一部に
集中する社会構造、失業率の増加による家族収入の低下、社会保障制度の不備
などを挙げている。
また、「飢餓撲滅計画」における中長期的な課題として、年率4%以上の経
済成長による雇用の創出、農地改革による農村への定着率の増加、食料生産の
増加、および家族農業への支援、地域および社会格差の是正、州や市が行う貧
困救済策への支援などがあるとしている。
また、同計画における緊急措置として、貧困家庭を対象とした食料品クーポン
の配布、公立学校の給食の充実などを挙げている。
ルラ次期政権の「政府計画」によると、ブラジルで飢餓に陥る可能性のある
家族数は約1,000万戸と推定されている。一家族4人として、同計画の対象人数
を計算すると、全人口の約4分の1に相当する約4,000万人と膨大な数に上る。
しかし、経済調査院(IPEA)の試算によると、同計画の予算総額は、約210億
レアル(約7,350億円:1レアル=約35円)ドルで、これは国内総生産(GDP)
の2%にも満たないとしている。
長期乾燥の影響から農村労働者が都市部へ流失、農業人口が減少
ブラジル地理統計院(IBGE)による農村経済の動向を見ると、2001年におけ
る10歳以上の農村労働人口は、99年比で12.3%減の約1,553万人となった。つ
まり、この3年間で、約218万人が減少したことになるが、IBGEでは、この減少
の最大の要因として、3年以上にわたって続いた北東部における長期乾燥の影
響で農村労働者が都市部へ流出したことを挙げている。2001年における北東部
の農村労働人口は約746万人と全体の半分弱を占め最大であるが、99年比では
約107万人の減少となった。
「飢餓撲滅計画」は、乾燥の被害が続くと食料の自給も困難となる北東部の
小農の救済対策でもある。北東部ペルナンブコ州出身のルラ次期大統領が掲げ
る同計画が今後、ブラジルの農村経済にどのような影響を与えるか注目される
ところである。
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