MLA年次総会において家畜取引課徴金の値上げを否決 ● 豪 州


国内での牛肉プロモーション活動強化のため、課徴金値上げを提案

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は11月20日、年次総会において、
家畜取引課徴金(Cattle Transaction Levy :CTL)の値上げを議決事項の1つ
として提案したが、生産者からの賛同を得られず、引き続き懸案事項となって
いる。現在、MLAの主な活動財源は、生産者が家畜を取り引きする際に納める1
頭当たり3.5豪ドル(約245円:1豪ドル=70円)の課徴金によって賄われてい
る。

 今回のCTLの値上げは、そもそも豪州肉牛生産者協議会(CCA)から提案され
ていたもので、その内容は、豪州産牛肉の販売に苦戦を強いられている日本や
近年販売が好調な韓国および近年食肉に占めるシェアが低下している国内マー
ケットでの牛肉のプロモーション活動を強化するため、CTLを現行の 3.5豪ド
ルから4.0豪ドル(約280円)に引き上げるというものであった。ちなみに、20
00年の豪州の国民1人当たり鶏肉消費量が、10年前と比べて32.0%増の32.9キ
ログラムと大幅に伸びている一方で、牛肉については 36.3キログラムと同 8.
3%の減少となっている。


否決の原因は、干ばつによる肉牛生産コスト増を懸念

 同案が可決されるには、投票数の75%の賛同を得なければならなかったが、
結果は45.7%と可決には大きく及ばなかった。CCAでは、干ばつにより肉牛生
産のコストが増加している時期であり、これ以上生産者の負担を増やせないの
で、CTLの値上げ提案を来年の総会まで延期したいとして、MLAの総会前にCCA
自らが掲げた提案を取り下げる意向を示していた。しかしながら、財政の脆弱
さを懸念するMLAが半ば強行的に議案として採決したことが、投票者の混乱を
招き、否決の原因の1つともなった。

 CTLは60年から家畜のと畜時に徴収される課徴金制度として実施され始め、
80年代にはすべての家畜の取引時に行われるものに改正された。また、生体家
畜の輸出時にも徴収されることとなり、91年に第一次産業徴収支払法(Primary 
Industries Levies and Charges Act 1991)により法制化された。

 CTLは、他の第一次産業課徴金と同様に連邦政府の農林漁業省(AFFA)により
徴収・管理され、その使途については、MLAの年次総会において、生産者が決定
する。MLAは、毎年総会で決定した使途に応じた財源をAFFAより交付されている。


MLAの研究開発経費増額は可決

 現在徴収されているCTL(3.5豪ドル)の使用内訳は、2.88豪ドル(約202円)
がMLAの活動財源にされている他、0.32豪ドル(約22円)はAFFAが実施する食肉
の動物用医薬品の残留検査プログラムである全国残留物質調査(National 
Residue Survey)に要する経費として使用され、0.30豪ドル(約21円)は家畜
伝染病の防疫管理を行う豪州動物衛生協議会(Animal Health Australia)へ交
付されている。なお、本総会では、全国残留物検査への交付分を0.20豪ドル
(約14円)減額し、その分を新たにMLAがDNA新技術等の研究開発の財源として
使用する提案がなされ、採決の結果承認された。

 報道によれば、MLAの2002年の肉牛部門からの課徴金収入は、皮肉なことに、
干ばつで早期に家畜を販売する生産者が増加し、昨年を230万豪ドル(約1億6,1
00万円)上回る結果が予想されている。

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