食肉、鶏卵の生産目標を公表         ● ベトナム


同国の中心的存在である養豚兼業農家に行政の支援

 ベトナム農業・農村開発省畜産研究所は、2010年までの食肉および鶏卵
の生産目標を公表した。同国政府は、農家の所得向上対策として、2001年10月、
酪農を国家計画の最重要課題の1つとし、酪農振興国家計画を開始しているが
(畜産の情報(海外編)10月号参照)、酪農以外の分野についてはプライオリ
ティーが低くなっていた。今回の目標公表は、ほとんどの農家が豚を中心とし
た兼業を営んでいる同国の現状にかんがみ、酪農以外の分野にも行政の支援が
必要であることを強調したものとなっており、食肉、鶏の消費量などについて
も目標に設定されている。今回は目標飼養頭羽数を公表することにより、農家
の増産意欲を高めるとともに、行政に対して農家への支援や飼料分野の強化の
必要性をアピールするものとなっている。


都市部と農村部の住民の所得格差拡大に政府による対策

 同国は、人口約8千万人のうち、約8割が農村部に居住し、農村部人口のう
ち約7割は農業を唯一の収入源にしている。近年、農村部と都市部における住
民の所得格差は、世帯当たりの月収ベースで3倍以上に達するほど急速に拡大
しており、政府は早急な対策を迫られている。所得格差拡大の要因には、主作
物である米の価格低迷と豚肉の価格下落などが挙げられている。

 ベトナムには、2001年末現在、水牛282万頭、牛(乳牛を含む)390万頭、豚
2,177万頭、鶏2億1,600万羽が飼養されており、水牛と牛が微増から減少傾向
であるのに対し、豚と鶏は過去5年間順調に増加している。2001年の豚の頭数
は、97年と比較すると430万頭、率にして約23%の増加、同じく鶏の羽数は、5,
540万羽、率にして34%の大幅な増加となっている。今回の発表では、2010年
の目標を牛460万頭(対2001年比18%増)、豚3,000万頭(同38%増)、鶏3億5,
000万羽(同62%増)としている。

 同国の年間1人当たりの食肉消費量は、29.0キログラムであり、このうち約7
7%に相当する23.5キログラムが豚肉となっており、鶏肉の3.5キログラム、牛
肉・水牛肉の1.7キログラム、山羊肉その他の0.3キログラムとなっている。鶏
卵の消費量は、年間1人当たり46個となっており、マレーシアの同246個、タイ
の同132個を大幅に下回っている。今回の目標では、食肉消費量を40キログラ
ム、鶏卵消費量を75個としている。


飼料自給率の向上も課題

 同国には、現在、飼料会社が136社あるが、飼料自給率は国内需要の7割程度
となっており、増頭羽には、自給率の向上も必要とされている。飼料について
は、CPベトナム社、プロコンコ社といった外資系の大手が圧倒的シェアを誇っ
ている。しかし、国立畜産公社傘下の飼料公社のように、職員の日本での研修
成果を基にして「フジヤマ」ブランドでの販売攻勢をかけている例もあり、地
元資本のシェア拡大の対する期待も大きい。


増頭による輸出拡大のみならず、品質の工場も課題

 ベトナムの豚肉は、赤肉割合が国際的な取引基準とされている53〜57%を下
回るものが大半であり、来年1月に行われるアセアン自由貿易圏(AFTA)の先行
5ヵ国における完全実施を控え、輸出市場獲得のためには増頭による輸出余力の
拡大だけではなく、品質の改善も必要とされている。同国は、アセアン諸国中
最大の豚飼養頭数を有しており、豚肉は最も重要な食肉であることから、養豚
をないがしろにしては農村振興をなし得ない面がある。今回の目標公表は、畜
産政策の軌道修正の表れとも見ることができ、今後の推移が注目される。

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