◇絵でみる需給動向◇
イギリス食肉家畜委員会(MLC)によれば、EUの豚肉の域外輸出量(冷蔵・冷 凍、製品重量ベース)は、2002年はEU加盟予定国(注)向けの輸出が大幅に増 加したことなどから、対前年比12.9%増の約80万8千トンとなった。これらの 国では、2004年5月のEU加盟に備えて輸入規制を緩和してきているが、これが 明確に出た結果となった。また、最大の輸出先となった日本向けや韓国向けも増 加した。 一方、以前最大の輸出先であったロシア向けは、7.3%減の12万1千トンとな った。EUからのロシア向け豚肉輸出は、99年には46万トンに達したが2001年 にイギリスやフランスなどで口蹄疫が発生し同国がこれらの国からの輸入を制限 したことや、近年、輸出の伸びが目覚ましいブラジルからの輸出が増加したこと などから、それ以後は減少している。なお、域外からの輸入量は、EU加盟予定国 からの輸入が増加したことから、対前年比2.9%増の約4万3千トンとなった。 (注):キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、 マルタ、ポーランド、スロベキア、スロベニアの中・東欧等諸国10カ国
MLCによれば、2004年の中・東欧等諸国10カ国のEU加盟により、域内の豚 の総飼養頭数は現在よりも26%増加の約1億5,400万頭となることが見込まれて いる。2002年12月末におけるこれらの国の豚飼養頭数は、増加していることが 報告されている。 EU加盟予定国の豚の飼養規模は現在小規模であるが、EU加盟後は農協組織が 中心となって規模の拡大が図られるとみられており、既にチェコやハンガリーな どではその動きが出始めている。また、EUへ豚肉を輸出するに当たっては、EU の厳しい衛生基準を満たさなければならず、ポーランドやチェコなどこれら諸国 のと畜場でEUの衛生基準を満たすものは、現在のところ非常に少ない。業界関 係者によれば、将来的に豚肉輸出国となるのはポーランドとハンガリーのみで、 他の諸国は自給国または輸入国になるとみられている。
エネルギー資源や農産物の関税率引き下げをめぐって、今年中のロシアの世界 貿易機関(WTO)加盟はロシア側から見送られた。同国では、一時期の経済低迷 から回復し国内の食肉消費の増加が伝えられているが、今年4月から国内豚肉産 業保護のため、関税割当制度(年間45万トン、今年は33万7,500トン)が開始 された。こうした中、現在もブラジルからロシアへの豚肉輸出が好調であること が報告されていることなどから、EUからのロシア向け豚肉輸出は今後、一層厳し い状況になることが予想される。このため、EUは今後EU加盟予定国等や日本、 韓国などへの輸出のさらなる増加を目指すと思われるが、域外最大の輸出先であ る日本の豚肉需給動向が、EU最大の豚肉輸出国であるデンマークも含め、域内豚 肉需給に間接的な影響を及ぼす可能性がある。
元のページに戻る