◇絵でみる需給動向◇
2002年11月〜2003年1月のブロイラーの生産量は、前年同月比91%台の低い 水準で推移した。2002年の年間合計生産量は前年比3%減の9億7,211万羽とな ったが、2001年は、前年比11%増と2000年に比べかなり大幅に増加しており、 2000年との比較では8%増となっている。中期的には順調な拡大傾向を維持し ているものとみられる。 一方、ブロイラー用初生ひなの発生数は2002年5月に前年同月比でマイナスに 転じて以降、同5〜11%減の8,200万羽程度で推移しており、年明け以降も当面 は大幅な生産量の増加は見込めない状況となっている。昨年後半以降の価格低 迷対策として2003年に入って、各生産者はさらなる減羽の動きを見せており、 2月の旧正月以降、4月中旬の仏暦正月にかけて国内需要が高まることが予想さ れることから、EU向け輸出の抗菌剤の残留問題の解決に伴う輸出価格上昇傾向 と合わせて、今後の価格回復が期待されている。 ◇図:ブロイラー用初生ひな発生数の推移◇
昨年7月末、EUは、従来、調製品に分類されてきた塩分1.2〜1.9%の冷凍鶏肉 の関税分類を変更することにより、一般の冷凍鶏肉と同様の関税率を適用する 措置を導入した(「畜産の情報(海外編)」2003年1月号参照)が、その後も 加塩鶏肉の輸入量は減少しなかった。このため、最近になってEUは、輸入され る調製品の分類基準に「保蔵性」の概念を追加し、調製品に含まれる塩漬け鶏 肉は塩分のみによって保蔵性を維持している必要があるとし、事実上すべての 加塩鶏肉の関税率を無塩の冷凍鶏肉と同一にする措置の導入を発表した。業界 団体によれば、この措置によりEUの輸入するほとんど全ての鶏肉調製品の関税 率が、現行の15.4%から冷凍鶏肉と同じ30%へ引き上げられる対象となる。EU は、この措置の施行期日を2003年8月15日輸入分からとしているため、タイ からEUまでの船積み輸送期間を1カ月程度、陸揚げ後の残留抗菌検査期間を2 週間程度とすれば、現行の関税率が適用される範囲は6月末までの出航分とみ られており、今後駆け込み的な輸出増加が起こる可能性がある。 また、タイ・ブロイラー加工・輸出協会によれば、EUは関税分類変更に起因す る分を含め、鶏肉の輸入量が急激に増加したことに対し、関税率を55〜60%に 引き上げるセーフガードの発動を検討している。同協会は、タイ政府に対し、 加塩鶏肉をめぐる問題について世界貿易機関(WTO)への提訴を求めており、 現在情報収集を行っているところである。
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