◇絵でみる需給動向◇
ニュージーランド(NZ)家畜改良公社(LIC)によると、2002年上半期(1月か ら6月)の酪農場平均価格(酪農経営に係る土地のみの平均価格)は、2001年 を4.3%上回る1ヘクタール当たり約1万4,500NZドル(98万6千円:1NZド ル=68円)と過去20年間で最高を記録した。これは20年前に比べると、約3 倍の価格となっている。 NZでは90年代に入り、東南アジアなどからの乳製品需要の高まりから輸出が 増加し、生産者乳価が高水準で推移するとともに酪農家の収益性が向上した。 このため、酪農場価格は92年から95年まで大幅に上昇した。その後は価格上 昇による酪農経営への圧迫や生産者乳価の低下から2000年まで低下したが、輸 出が好調であることを背景に生産者乳価が再び上昇し、2001年から再び上昇し ている。 ◇図:酪農場価格と生産者乳価の推移◇
一方、2001年の酪農場売買戸数は、941戸と89年に次ぐ売買戸数となった。こ れは、酪農場価格が上昇したにもかかわらず、乳価が高水準であることを背景 にした酪農家の経営規模拡大に対する意欲の表れとみられる。NZの酪農は放牧 が中心であるため、頭数に対し一定の牧草面積を持つことが乳量の確保に結び つくことから、規模拡大を進める酪農家は、既存財産(土地など)を担保に中 小酪農家や酪農跡地を買収し、放牧地面積の拡大を図っている。また、NZでは 国際競争力を強化するため、低コスト生産を目指して酪農経営の規模を拡大す る傾向が続いている。なお、2002年上半期の売買戸数は、378戸となっている。 ◇図:酪農場売買件数と平均面積の推移◇
こうした中、NZの巨大乳業メーカーであるフォンテラ社は先ごろ、2002/03 年度の生産者への乳価支払い見込みを、乳製品の国際取引が年度前半低迷した こととNZドルが米ドルに対して高値で推移していることから、2001/02年度 の価格(1キログラム当たり約5.3NZドル(360円:乳固形分ベース)を3割以 上下回る約3.6NZドル(245円)とすることを発表した。また、フォンテラ社な どの報告に基づいたNZ農林省の中期需給予測によれば、生産者乳価は2005/ 06年度になっても2001/02年度の価格に回復することはないと予測している。 こうしたことから酪農家の収益は低下することが見込まれ、今後の酪農場価格 は、現在の高値水準も考慮すると低下することが予想される。 なお、これにより、酪農場価格が北島よりも安く、かんがい整備や土地規制の 緩和など酪農業に進出しやすい環境が整備されてきている南島では、新規酪農 家の参入が拡大するとみられる。
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