イギリス食品基準庁、市民によるGM食品諮問会議を開催


市民による諮問会議を開催

 イギリスでは、遺伝子組み換え(GM)食品はトマトピューレなど3種類が販
売を認められているものの、消費者のGM食品に対する懸念から、これらを店
頭で見かけることはない。

 こうした中、イギリス食品基準庁(FSA)は、安全な食品について消費者がよ
り幅広い選択ができるようにするとの観点から、GM食品に関する学生による討
論会や、地方での市民討論会の開催等を行っている。これにより、GM食品に関
する一般市民の関心を高め、理解を深めるとともに、GM食品が消費者に受け入
れられる可能性や消費者の選択についての意識を把握している。

 この活動の一環としてFSAは4月7日、「イギリスでGM食品を購入できる
ようにするべきか」と題し、一般から選出した市民による諮問会議を開催した。

 この会議はイングランド中南東部の町において、メンバーに主婦、学生、会
計士、タクシーの運転手など人口構成を考慮して15名を選出し、3@@日間にわ
たり開催された。まず、会議の進め方について、続いてGM技術やGM食品の
安全性評価方法、遺伝子とは何かなど、基礎的な科学知識について説明が行わ
れた。その後、消費者団体、農薬等のメーカー、報道機関、研究機関などから
参考人に出席してもらいGM食品に関する意見の聴取や、質疑応答などを行っ
た。
 最後に、会議は「イギリス国内でGM食品を購入できるようにすべきである」
と答申をした。しかしながら、15名のメンバーのうち6名が、イギリスはGM
食品についての準備ができていないとして反対した。


GM食品の導入の条件

 「GM食品を購入できるようにすべきである」と答申した理由としては、

@ 食品の安全性確保のための対策を信頼していること、

A GMに反対する人々の意見もあるが、選択する権利があるべきであること、

B もしイギリスが新たな科学の進展に取り組まなければ、取り残されてしま
 うことが挙げられている。

 一方、諮問会議のメンバーは、
@ GMOについて、その試験研究の進展状況や可能性のある問題について、一
 般の人々に対しより分かりやすい情報を提供すること、

A 消費者がGM食品の選択を行うためのGM食品のロゴマークやGM食品表
 示をより効果的な、わかりやすいものとするとともに監視を行うことがイギリ
 スにGM食品を導入する上で、極めて重要であるとの考えで一致した。

 また、メンバーの中には、GM物質の安全性についての長期的な評価が必要で
ある、倫理上の問題がある環境への影響を懸念するなどの意見を表明する人も
いた。環境に関する事柄はFSAの範ちゅうではないものの、FSAによればこの
ような意見も最終報告書には記載される予定である。

 なお、FSAは、GM食品に反対する団体の意見も含め、ホームページを通じて、
GM技術の現状や、GM作物の生産状況、安全性評価の方法などに関する情報等
を提供している。また、今回の諮問会議の模様についてもホームページ上でイ
ンターネット中継し、何千人もの人々のアクセスがあったと伝えている。

 FSAはこの夏、これまでのGMに関する情報や意見の評価を行う会議を開催
し、その後、GMについてのFSAとしての見解を取りまとめイギリス政府に提
出することとしている。



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