アルゼンチン農林業センサスの速報を公表 ● アルゼンチン


14年前と比較して総面積は横ばい、EAPは25%減少

 アルゼンチン国家統計局(INDEC)は、昨年10月から本年1月まで調査した
農林業センサスの速報を3月下旬に公表した。本調査は1988年以来14年ぶり
に実施された。

 多くの州にまたがって農業経営をしている者等からのデータが一部回収され
ていないが、おおよその全体像がわかる。
速報は以下の通り。

 ・ 総面積:1億7,133万ヘクタール(1988年比▲3.4%)

 ・ EAP(同一州内に500平方メートル以上の土地を有し、販売目的の農業、
  畜産、林業を営む経営体。なお自家消費や研究目的で生産を行い、余剰生産物
  を市場へ販売するものも含む):31万7,816経営体(同▲24.5%)

 ・ 1EAP当たり面積:539ヘクタール(同+28.0%)

   総面積の減少率に比べてEAP数の減少率が大きく、1EAP当たり面積
  が増加していることが分かる。これは、91年からの1ペソ=1ドルの固定相場制
  度(兌換制)により輸出競争力が失われ、小規模EAPは事業拡大・新技術導入
  のための投資が困難となり農業を止めざるを得なくなり、代わって資本力があ
  る大規模EAPがその土地を吸収していったためであると分析されている。なお、
  現地では「大規模EAPに土地所有が集中」と報道されているが、実際に土地を
  所有しているのか、または借用しているのか速報では不明であり、詳細データ
  の公表を待つことになる。

家畜の飼養頭数、羊と豚が激減

 家畜の飼養頭数


 牛の飼養頭数は、14年前とほとんど変わっていない。ただし、INDECは今回
の速報の公表とともに、1994年と2000年に抽出で実施した農業アンケート調査
の結果も合わせて掲載しており、それぞれの牛の飼養頭数は5,316万頭、4,867
万頭であることから、一度増加し、その後減少に転じていることが分かる。

 一方、羊の飼養頭数は半減している。これについてアルゼンチン農牧水産食
糧庁(SAGPyA)は、88年には生産された羊毛の91%が輸出されていたが、兌
換制による輸出競争力の低下や、噴火による火山灰のたい積(92年)、冷害(94、
95、2000年)、干ばつ(2000年)、羊毛の国際価格の低迷などが原因であると
分析している。なお、98年から牧羊業を振興するための制度が検討され、2001
年に牧羊業復興法が制定されている。

 また、豚の飼養頭数も4割近く減少した。これは兌換制導入後、国産品より
ブラジル等からの輸入品の方が安くかつ高品質であったため輸入量が増加し、
経営改善のための新技術等を導入できない国内の中小農家が耕種へ転換または
廃業したためであるとSAGPyAでは分析している。ちなみに、豚肉および豚肉
加工品の輸入量は、88年には約3千トンであったものが、1998年には史上最高
の7万1千トンに達している。


GMOや有機生産の実態も明らかに

 最終的な報告は今年7月に公表される予定であり、その際は@土地の所有形
態(所有、賃貸の別)、A放牧面積を含む土地の利用実態、B生産方法、C遺
伝子組み換え体(GMO)の生産や有機農業の実施の有無、D使用機械の種類と
新品・中古の別、E農林業に付随した商業活動(畜産物の出荷先、観光牧場な
ど)などについても報告される予定であり、アルゼンチン農業の詳細が分かる
と期待されている。



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