生産増を実現しながら苦境に立つ養豚・養鶏 ● フィリピン


食肉生産量は増加だが生産者は苦境

 フィリピン農務省農業統計局が今年3月末に発表した、2002年の畜産統計に
よれば、2002年の食肉の生産量は前年比5.4%増の約310万トンとなり、2001
年の前年比5.6%増に引き続いて2年連続の同水準の順調な伸びとなった。生産
量を畜種別に見ると牛肉が前年から100トン減少し微減傾向が続いているのに
対し、豚肉は前年比5.2%増、鶏肉は同6.8%増となっており、農務省は養豚と
養鶏が同国の農業分野の中で最も将来性が高く、農業生産額の伸びに対する貢
献も大きい分野であると評価している。

 このような評価がある一方、2002年の豚肉および鶏肉の需給は生産増による
供給過剰に陥ったとされており、鶏肉については2003年に入って、大手インテ
グレーターが羽数の削減を開始していると伝えられているほか、豚肉について
は価格低下に苦しむ生産者が、政府に対して輸入削減と不正輸入の根絶を求め
る行動を続けている。


食肉の生産量         (単位:千トン、生体重基準)



食肉消費量は今後も増加の見込み

 フィリピンの2002年の国内総生産(GDP)は、政府の見込みを上回る前年比
4.6%増となっており、経済成長にともなって食肉消費量も徐々にではあるが増
加している。農務省によると2001年の年間1人当たりの消費量は、鶏肉が7.67
キログラム、豚肉が13.45キログラム、牛肉が3.58キログラム、合計では24.7
キログラムとなり、先進諸国と比較すると依然として低い水準ではあるが、同
国の人口増加率は2.3%の比較的高い水準を維持しているため、食肉の総消費量
は今後も増加を続ける見込みである。


年間1人当たりの主要食肉消費量の推移        (単位:キログラム)



不正輸入の急増に苦しむ生産者

 農務省によれば、2002年の食肉輸入量は、鶏肉が前年比8%減の1万2千ト
ン、豚肉が同33%減の1万トン、牛肉が同13%増の11万5千トンとなってお
り、2003年の輸入は牛肉を除き2002年と同水準または減少と見込まれている。

 同国は鶏肉と豚肉をセンシティブ品目として高い関税率を設定する代償措置
としてミニマムアクセスによる関税割当枠を設定しており、2002年の割当数量
は鶏肉が約2万1千トン、豚肉が約4万8千トンであった。鶏肉の割当数量の
消化率は2001年の60%から86%へ増加しており、主にアメリカからの低価格
のもも肉の輸入が増加している。一方、豚肉の割当数量の消化率は2000年に44%
であったものが2001年は19%、2002年は13%と大幅に低下しており、正規の
手続きによる低価格の豚肉の輸入は減少している。
生産者団体は減少分を上回る不正輸入の急増により、国内の養豚が危機に瀕し
ているとしている。



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