継続的な酪農振興対策を表明 ● フィリピン


低調に推移する国内生産

 フィリピンでは2001年の1人1年当たりの乳製品消費量(生乳換算)は21
キログラムで、人口の増加と共に総需要量は増加しているが、一方で国内生産
量は1万800トンに過ぎず、173万5千トン(生乳換算)を輸入に頼っており、
その乳製品需給率はわずかに0.86%に過ぎない。

 このような輸入乳製品への依存状態を解消するために、1995年に制定された
国家法7884に基づき設立された全国酪農公社(NDA)を中心として酪農業の振
興が従来図られており、近年では「白の革命」と呼ばれるプロジェクトにより
国産生乳の消費拡大、地方酪農家の生活向上の機会の構築などを主な目的とし
た対策がとられている。

 2000年11月にこのプロジェクトが立ち上げられ、10年間で乳製品自給率を
25%まで引き上げるとされていたが、実際はここ数年、国内生産量は横ばいで
推移しており、2000年以降は大手乳業メーカーによる事業拡大等の影響で、乳
製品輸入量の増加と従来ほとんど無かった輸出量の急激な増加(2000年の輸出
量は生乳換算で5万1千トン、前年に比べ約20倍の増加、2001年は前年の2倍
の10万7千トン)となった。


第8回全国酪農会議開催される

 3月12〜14日にマニラの南約100キロメートルに位置するバタンガスで開催
された全国酪農会議ではアロヨ大統領の年間千頭の乳用牛増頭目標を含めた酪
農、乳業を今後とも継続的に振興する方針が伝えられるとともに、各種団体よ
り政府に対し酪農振興のため以下の提案がなされた。

◎ 乳用牛調達の多角化

 現在、乳用牛の生体輸入は口蹄疫清浄化を推進している観点から、そのほと
んどが清浄国である豪州とニュージーランドからの輸入となっている。

 フィリピン酪農振興協会は、輸入価格が高いことから国内乳用牛の頭数の増
加を阻害する要因になっているとして、適切な検疫体制をとり、危害評価手順
を踏むことにより、非清浄国を含むその他の国からの生体輸入を認めるよう要
請した。同時に、早急に国内乳用牛頭数増大のためのサポート体制の整備を図
ることを要請した。

 これに関連して、4月からNDA南ルソン地方事務所と酪農訓練・調査協会
の合同チームによって第4行政地域内パラワン地方で乳用牛供給プログラムが
開始された。それによると、国立種畜牧場で飼養する500頭のブラーマン種雌
牛にホルスタイン種の精液を人工授精することで耐暑性を備えた泌乳量の多い
交雑種を作り、これを農家に配布することで国内での乳用牛の供給体制を整備
し、乳用牛の生体輸入を減少させるとしている。

 また、NDAは国立種畜牧場とは別に、民間の牧場と地方行政機関の連携体制
の整備を図り、同様のプログラムを全国で展開するとしている。

◎ 乳製品表示の差別化

 同国保健省食品医薬品局によると現在、輸入飲用乳の表示については超高温
滅菌(UHT)、低温長時間殺菌(LTLT)、高温短時間殺菌(HTST)のすべてが
一括して殺菌乳として位置付けられている。フィリピン酪農連合(DAIRYCON)
は、UHT処理されたロングライフの輸入飲用乳であっても「フレッシュミルク」
と表示できるのは不適切であり、消費者が国内生産された殺菌乳と区別できる
ようにするため、殺菌乳と滅菌乳の表示の差別化を図るべきであると要請した。

◎ 輸入乳製品に対する関税率増大

 また、DAIRYCONは同時に、輸入飲用乳(UHT)に対する輸入関税を現行の
3%からWTO協議の承認範囲内である18%まで引き上げることを要請した。




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