上海の食品小売市場の動向 ● 中 国


 米農務省海外農業局(USDA/FAS)が公表したレポートによれば、上海では
食品の売り買いの手段を改革しようという機運が高まりつつあり、都市が活気
づいている。中国の食品小売部門の概要は本誌2003年1月号で紹介したが、今
回はその後も猛烈なスピードで成長を続けている上海についての報告を紹介す
る。


ハイパーマーケットはさらに巨大化

 上海におけるハイパーマーケット数は飽和状態に近づいているとする向きも
あるが、小売市場は少なくとも今後2、3年は成長を続けると見られる。現
在、上海では、すでに10企業の経営によるおよそ70のハイパーマーケット(超
大規模店)が存在し、この中にはCarrefour(フランス)、Lotus(タイ)、Metro
(ドイツ) Auchan(フランス)などの外資系チェーンとしてよく知られている
企業が含まれているが、さらにその他の国内、海外双方の企業も中国の小売市
場への進出を予定している。例えば、米国の巨大小売企業であるウォルマート
は、2005年に上海第一号店の出店計画を公表した。一方、四川省に本拠を置く
New Hope Groupは上海への新規参入を表明し、今年中にハイパーマーケットを
2店舗、2005年にも数店をオープンさせるとしている。New Hope Groupは中国
最大の民間企業で、農業、不動産、金融への大規模投資を行っている。また、
90年代に上海から撤退したHong Kong'Park'n Shopも小規模経営から大規模経営
の転換を図り、再出店を計画している。

 すでに上海に店舗を有する企業についても、国内最大手のLianhuaはさらに3
〜4店舗、またE-Martも5店舗の出店を予定している。Carrefourは、なかでも
出店に最も積極的な企業であるが、ハイパーマーケットビジネスの事業拡大計
画を表明している。Carrefourはすでに20都市に36のハイパーマーケットを有
しているが、Lianhuaと手を組み、ディスカウントストアのチェーン展開を計画
している。ディスカウントストアは小規模で大幅値引きした自社ブランド製品
のうち、限られた品目のみを取り扱うこととしている。Carrefour はまた、北京
においてShoulian Group(数社の地方スーパーマーケットチェーンから形成さ
れている)との提携によりスーパーマーケット規模のチェーン展開も予定して
いる。


外資系企業との競合に対し、合併で巨大化

 外資系企業との競合は、地方自治体にとって重大な懸念となっている。これ
を受けて、中国の2大小売チェーンであり、上海に本拠をおくLianhuaとHualin
の合併が先般公表された。なお、この合併には上海♯1Department Store Company
という地方の小売店も加わっている。この合併により巨大国内小売企業を確立
し、CarrefourやWal-Martといった多国籍企業との競争にも対抗できることを目
指している。この結果、国内最大の小売企業となり、第2位となる企業の3倍
の規模を有し、中国国内の市町村に明らかな存在を示すことになる。ただし、
LianhuaとHualinともに深刻な経営問題を抱えており、合併が解決の糸口となる
のか、問題を深刻化させるのかはっきりしていない。


コンビニエンスストア市場は変革期に

 上海におけるコンビニエンスストア市場は、変革期を迎えつつある。上海に
は中国のコンビニエンスストアのおよそ半数が集中しているが、急激な成長に
より、1店舗当たりの収益が落ちている。このため、上海の市場はすでに飽
和状態と大方がみなしているにもかかわらず、いくつかの外資系企業が上海へ
の出店に関心を示していることを明らかにしたり、またはうわさとして流れて
いる。日本のファミリーマートは数店舗の出店を計画中である一方で、セブン
イレブンは上海への出店許可を受けたものの、まだ飽和状態に達していないと
される北京への市場開拓に焦点を絞りつつある。

 こうした状態は、買収や合併の可能性のうわさをあおっており、地方チェー
ンの拡大を引き出し、それらの買収価格を増加させることを目的にしていると
も見られる。上海の大手コンビニエンスチェーンのひとつであり、およそ500
店舗をもつLiangyouでは、最近、経営陣の交替を図り、日々の経営は外資系の
共同経営者に引き継がれたことを明らかにし、さらに地方の投資会社からの資
本注入を受けたとしている。業界アナリストによると、この措置は本格的な合
弁事業形成への序章と見ている。

 上海の食品小売市場は外資系企業による買収や合併により、その所有構造が
複雑に絡んでいる。



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