◇絵でみる需給動向◇
ブロイラーの生産量は、年初来一貫して減少傾向が続いており、2002年10月 の生産(出荷)羽数は、前年同月を約11%下回る約7,867万羽となった。供給 量が減少しながらも下降を続けていたブロイラーの卸売価格は、同月には9月 と比べ約5%高の生体重1キログラム当たり22.5バーツ(約65円:1バーツ=2.9 円)と上昇に転じており、11月にも上昇傾向が続いている。卸売価格は、前年 同月比でも回復が見られており、8、9月が前年同月比33%程度の低下であった のに対し、10、11月は同22%程度の低下となっており、10ポイント程度の改善 が見られる。
2003年2月現在、タイでは卵価が低迷しており、農業協同組合省は鶏卵の需 給調整策として卵用鶏の大量とう汰を行う計画である。とう汰計画は、1月上 旬に、同省と大手生産者との間で合意されているものの、実質的には進んでい ない。しかし、今後、とう汰が進めば国内市場に廃用鶏が大量に出回ることに なり、ブロイラーの卸売価格に対する下げの圧力として作用する可能性がある。 通常、タイ国内のブロイラー価格は、年末から2月の旧正月にかけての需要の 高まりによって大幅な下落を免れているが、2002年末から2003年初頭にかけて は下落が見込まれている。
タイ家畜飼料協会が取りまとめたブロイラーの農家出荷価格と初生ひな価格 を比較すると、両者の推移はほぼ同様の傾向となっている。しかし、過去3ヵ 年間を見ると、農家出荷価格の平均が生体重1キログラム当たり26.7バーツ (約77円)、価格の変動幅が12.9バーツ(約37円)であったのに対し、初生ひ な価格の平均は1羽当たり8.7バーツ(約25円)、価格の変動幅が11バーツ(約 32円)となっており、初生ひなの価格がブロイラーの市場動向により大きな影 響を受けていることがわかる。既に述べたように、ブロイラー卸売価格が今後 急激に上昇すると見込まれないことから、農家出荷価格も急激に上昇するとは 考えられず、当面は初生ひな価格も低い水準で推移すると見込まれる。
昨年3月以降、EU向け輸出で大きな問題となっていた抗菌剤の残留問題は、 登録農家制度の施行や輸出前検査の強化などによりほぼ解決され、今年1月22 日に行われたタイ農業協同組合省副大臣とEU技術委員会との協議により、従 来のサンプル検査に移行することで合意した。同協議には、国連食料・農業機 関(FAO)の代表者も参加しており、今後、各種規制が開発途上国の貿易促進 を阻害することがないよう、各国がコーデックス規格に準拠し、科学的根拠に 基づいた残留規制値を適用するよう働きかけていく意向を表明した。 ◇図:農家出荷価格と初生ひな価格の推移◇
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