◇絵でみる需給動向◇
ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、2002年のEUの乳製品市場は、 年の中頃に予想していた以上に早く需給の不均衡を起こすこととなった。バタ ーと脱脂粉乳の介入在庫量は増加を続けており、この不均衡は、ここ12年間で 最も大きいものとなっている。 ZMPは、この主な要因として、2002年前半の生乳生産量が増加したことを挙 げている。EU全体での生乳生産量は、2002年の1月〜5月で、前年同期比0.7% 増の50万7千トンと増加している。特にイギリス、アイルランドおよびフラン スなどの主要生産国での増加が顕著であった。イギリスでの生乳生産量は、20 02年4月で前年同月比9.0%増、5月で同3.8%増となっている。これは、この時 期としては1990年以来最高の量であった。この生乳生産量が2002年の前半に増 加した理由としては、欧州での口蹄疫発生で子牛の出産を遅らせたこと、西欧 で春の気候が恵まれていたことを挙げている。
このように生乳生産最盛期での生産量が増加したため、バターと脱脂粉乳の 生産も増加し、介入在庫量が増加することとなった。バターの介入在庫量は、 2002年6月にはすでに前年同月比341.6%増の14万トンとなり、12月には、同20 5.9%増の19万1,200トンと96年6月以降では最も高くなっている。また、脱脂 粉乳の買上げは、2000年10月以降行われていなかったが、2002年3月に17ヵ月 ぶりに実施され、12月の介入在庫量は14万2,100トンとなっている。 ◇図:バターと脱脂粉乳の介入在庫量の推移◇
世界各地では、生乳生産に不利な条件が多く見られている。オセアニアでは、 乳製品の国際価格の低迷と干ばつが、南米では、経済危機による需要の低下に よる生産の低下、また、東欧のバルト海沿岸の国での悪天候、チェコでの生乳 生産の沈滞などが挙げられている。これらの世界各地での供給量の減少は、EU のバター、脱脂粉乳の在庫量の解消につながる可能性も出てきている。
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