壊滅の危機に瀕する養鶏・養豚農家 ● ミャンマー
深刻化する経済危機が畜産農家の経営を圧迫
ミャンマーでは、昨年来、エネルギー危機が深刻化しており、国営英字紙
「New Light of Myanmar」のサイズも従来の全紙版からタブロイド版に縮小
されるなど、消費物資全般の不足が深刻な様相を呈している。輸送用の燃料の
不足も深刻であり、物流費が高騰していることから、配合飼料が高騰し養鶏・
養豚農家が経営的に立ち行かなくなるなど、畜産にも深刻な影響が表れ始めて
いる。畜産物の卸売価格(ヤンゴン市)も大幅に高騰しているものの、農家の
利益は、物流費の高騰分により相殺あるいは減額されているとみられている。
畜産物および飼料の卸売価格1)
注1)各年の12月31日現在の価格
2)鶏卵は1個当たりの価格
卸売価格を上回って高騰する小売価格
一方、2002年12月31日現在のヤンゴン市の小売価格は、牛肉と豚肉ともに1
キログラム当たり1,125チャット(約124円:100チャット=11円)でそれぞれ
前年比157%高と38%高、在来鶏の鶏肉が同1,625チャット(約179円)で同100
%高、ブロイラーが同1,250チャット(約138円)で同82%高となっている。小
売価格は、いずれも卸売価格の上昇率を上回る大幅な上昇となっており、国民
生活に与える影響も深刻である。
畜産農家の廃業が進む
昨年12月23日に開催された第3回ミャンマー畜産連盟の年次総会における各
州・管区畜産連盟の報告によれば、中小規模の卵用、肉用を含む養鶏農家で経
営不振による廃業が多発しており、鶏飼養羽数が前年比25〜35%程度の大幅減
少となっている。各地区連盟では、今後も減少が続くことを見込んでおり、鶏
肉を中心に需給事情が一層悪化する可能性がある。
同国の畜産振興は、一般的な農家所得の向上だけを目的としたものではなく、
ケシ栽培の代替収入源や数少ない輸出可能性を有した産品としての重要性も有
しているため、畜産の衰退は多方面に影響を及ぼす可能性がある。
政府は公的機関による生産増加で対応
畜水省家畜改良・獣医局は1月27日の当駐在員事務所からの問合せに対し、
現在の状況が続けば、近い将来、国内の中小規模養鶏農家がまったく立ち行か
なくなる可能性を示唆した。同局によれば、政府はこのような状況に対処する
ため、中国の援助により全国17ヵ所に種鶏・種豚場を設立し、畜産農家の生産
費削減に努めるほか、軍隊や地方行政組織による農場を設立して当面の需給ギ
ャップを埋める方針であり、現在、ヤンゴン市内にある同省飼料・牛乳公社ピ
ンマビン畜産団地で、軍隊や地方行政組織に対する技術研修を行っている。
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