NAFTAの実施を巡って米・墨の対立が顕在化


米国産豚肉に対するアンチダンピング調査の開始

 NAFTAに基づき、メキシコにおける米国産豚肉に対する関税措置(関税割当
制度)は、本年1月以降撤廃されたが、これにタイミングを合わせるかのよう
に生産者団体のメキシコ養豚協議会(CMP)は、メキシコ政府に、米国産豚肉
がメキシコに不当な安値で輸出されていた恐れがあるとしてダンピング防止税
賦課のための調査の要請を行った。2002年4〜9月の6カ月間における米国から
の豚肉輸入価格が対前年同期に比べ28.5%下落したことで輸入量が増加(26.2
%)し、同種の産品である国内豚肉価格の低下などにより国内産業に損害が生
じたとしている。これを受けて、メキシコ政府は1月7日、事実確認のための調
査を開始すると公式発表した。同国政府は、2月19日までパブリックコメント
を受付けるとともに、発表の翌日から130日以内に暫定的な調査結果を発表す
るとしている。


米国側からは強い不快感

 この発表に対し米国の関係者からは、強い不満の声が上がっている。全国豚
肉生産者協議会(NPPC)のローパー会長は調査開始の発表翌日、「米国産豚肉
はメキシコ向けにダンピング輸出などされていない。NAFTAの実施を妨げ、再
交渉を目論む露骨なやり方である」として強い不快感を表わすとともに、「メ
キシコ政府は、この発表の一方で日本とのFTA交渉において日本に対し豚肉関
税の撤廃を主張している」と皮肉を述べた。また、ベネマン米農務長官も農業
アナリストとの会談の中で、「メキシコの養豚団体は、WTOのルールに基づく、
輸入豚肉のダンピングを申し立てる立場にはなく、(本来申し立てを行うべき)
メキシコの豚肉加工業界は調査の開始を支持していない。これは根拠のない不
当なものであり、USTRとともにメキシコ政府に対しこの申し立てを却下するよ
う求めて行く」と述べている。

 NAFTAに基づく農産物の関税措置の撤廃をめぐっては、メキシコの生産者団
体が大規模な抗議行動の実施を呼びかけるなどメキシコ国内では大きな政治問
題にもなっているところであり、今後も両国における動きが注目されるところ
である。

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