◇絵でみる需給動向◇
EU委員会は2003年6月、EU 15カ国における主要農畜産物の需給に関する中期見通 しを発表した。前月号では、予測の前提条件と生乳生産に関する見通しを紹介した が、本号では、主要乳製品(チーズ、バターおよび脱脂粉乳)の需給見通しについ て取り上げる。
EUのチーズ生産量は、消費量とともに、2010年まで毎年着実に伸びることが予 測されている。消費量は、2002年から2010年まで0.4〜1.6%の伸び率で増加し、 2010年は2002年に比べて7.9%増の766万トン(1人当たりの消費量は、19.87キロ グラム)と見込まれている。生産量も 0.3〜 1.4%の伸び率で増加し、2010年は 2002年に比べて 6.6%増の769万1千トンと見込まれている。また、輸入量も同期 間で2.3%増の18万1千トンと見込まれている。 なお、輸出については、チーズが世界的に供給過剰となり、豪州やニュージー ランド(NZ)などとの競争が激化することが予想されることから、2010年は2002 年に比べて7.3%減の44万5千トンと見込まれている。
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資料:EU委員会 注:輸出入量は、域外との貿易量 |
バター生産量は、・2003年以降の介入買い入れ価格を引き下げること・生乳がチ ーズ生産に仕向けられること・2005 年以降の輸出が減少すること-などから、2003 年以降、毎年減少することが予測されている。 2010年は、2002年に比べて 11.6% 減の172万1千トンと見込まれている。一方、近年、回復の兆しが見えていたバター の消費量は、2001年から2010年までは1,700万トン台(1人当たりの消費量は、 4.4 〜4.7キログラム)で安定して推移する。2010年には生産量を上回る見込みであり、 その不足分については、介入在庫からの放出と域外からの輸入により補われる。 なお、輸出については、ロシア向けなど 2004年まで増加すると予測されるが、 2005年以降は、バター需要の増加が見込まれている発展途上国向けで豪州やNZとの 競争が激化することなどから、減少することが見込まれている。2010年の輸出量は、 2002年に比べて27.6%減の15万2千トンと大幅な減少が見込まれている。
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資料:EU委員会 注:輸出入量は、域外との貿易量 |
脱脂粉乳生産量は、・2003年以降の介入買い入れ価格を引き下げること・2004 年以降、消費および輸出が減少すること-などから、2003年以降、毎年減少するこ とが予測されている。2010年は、2002年に比べて24.0%減の82万5千トンと大幅な 減少が見込まれている。消費量は、2004年以降主に子牛の飼料用の消費減少によ り、減少することが予測されている。2010年は2002年に比べて10.2%減の78万2千 トンと見込まれており、飼料用は、19.8 %減の34万5千トンと見込まれている。 なお、輸出については、アルジェリア向けなど2004年には20万トンまで増加する と予測されるが、20005年以降は減少し、2010年は2002年と同じ15万トンになると 見込まれている。
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資料:EU委員会 注1:生産量には、バターミルクパウダーを含む 2:輸出入量は、域外との貿易量 |
今年6月の共通農業政策(CAP)改革合意で、EUのバターおよび脱脂粉乳の介入買 い入れ価格は、1月のCAP改革規則案よりも引き下げ幅を縮小することとされた。新 たに設定されたバターの買い入れ限度数量は、同規則案よりも数量は拡大された (詳細は、本誌2003年8月号トピックス参照)。また、規則案の通り2014 年度まで 存続することとなった生乳生産割当(クオータ)制度は、各国のクオータが2006年 度から3年間0.5%ずつ拡大されるため、バターおよび脱脂粉乳の生産量は今回の需 給見通しよりも増加、チーズは減少する可能性がある。
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