特別レポート
EUにおける畜産副産物をめぐる情勢と規則の概要について
ブラッセル駐在員事務所 関 将弘、 山崎 良人
2002年10月、EUは、畜産副産物に関する規則((EC)No1774/2002)を制定した。
この規則は家畜の血液や皮などを含む畜産副産物(人間の食用とはならないもの)
の収集、加工、利用、処分等の方法・基準等を定めたもので、飼料の原料として利
用できる畜産副産物を、人間の食用に適した家畜より得られたもののみと限定して
いる。
本規則は、牛海綿状脳症(BSE)や、ダイオキシン汚染、口蹄疫など飼料を原因と
する食品問題の発生とこれを防止することを目的に、2000年10月に EU委員会より欧
州議会、農相理事会に提案され、その後2001年12月に修正提案が行われ、約2年間の
議論を経て制定され、本年5月から適用されている。今回のレポートでは、EUにおけ
る畜産副産物をめぐる情勢と規則の概要について報告する。
EU委員会の資料によれば、「畜産副産物(animal by-products)」とは、と畜さ
れた家畜の体の一部分であって、人間に直接消費されないものであり、農場でへい
死した家畜やレストランやケータリング(配膳)業者などの調理場から排出される
食肉または食肉に接触した食品廃棄物を含むとしている。
畜産副産物の生産(排出)量
EU委員会の資料によれば、牛や豚、鶏などの家畜・家きんについては、その生産
物として人間に直接消費されているのは
・家きんでは、生体重の68%
・豚では62%
・牛では54%、
・山羊や羊では52%
であり、2000年にはEU全体で1,600万トン以上の畜産副産物が生産(排出)されてい
る。
畜産副産物の利用状況
畜産副産物は、さまざまなものに姿を変えて利用されており、靴や鞄などの皮
革製品、肥料以外で、その主な例を挙げると
食品
お菓子、マシュマロ、調理済み肉製品などの材料としてゼラチン(骨、皮や腱
などの関節組織から製造)や油脂(骨、肉の整形の際に出る肉片やくず肉から製
造)を利用
家畜の飼料(油脂、肉骨粉以外)
ビタミン剤の被覆材や飼料をペレット化する際の結着材としてゼラチンを利用
ペットフード
犬用ガムや調理済みの缶入りペットフードの材料としてゼラチンや肉の整形の
際に出る肉片やくず肉を利用
その他
カプセルなどの医薬品、写真の印画紙の結合材にゼラチンを、化粧品に油脂を
利用
図1 畜産副産物の利用状況
畜産副産物の処分・利用方法
EU 委員会の資料によれば、2000年における EU 全体での 畜産副産物の収集量は
1,620万トン。そのうちドイツ、フランス、イタリア、イギリスおよび スペインで
全体の78%を占めている。
処分方法と実施している国(複数の方法で処分を行っている国もある。)は、以
下の通り。
・「焼却処分」、「燃料としての焼却」
ほぼすべての加盟国で、危険性が高い畜産副産物はレンダリング処理し肉骨粉と
した後、焼却処分か動力等を得るための燃料として焼却。
イギリスやギリシャではレンダリング処理を行わずに生のままでの焼却も実施。
燃料としての焼却は、主に、オーストリア、ドイツ、スペインおよびフランス。
・「埋却処分」
フィンランド、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペイン、
スウェーデンおよびイギリス。
・「バイオガス生産資材として利用」
ドイツ、スウェーデンおよびオーストリア。
・「たい肥化したのち肥料利用」
オーストリア、フィンランド、フランス、ドイツ、ルクセンブルグおよび
スウェーデン。
図2 EUにおける畜産副産物の収集量(2000年)
資料:EU委員会
|
|
この規則は、EU全体の公衆衛生を高い水準で確実に守るという基本的な目的にこ
たえるため、健康に悪影響のある畜産副産物がフードチェーンに入ることを防ぐこ
ととし、畜産副産物のカテゴリー分けとカテゴリーごとの収集・処分方法、加工済
みの製品と加工前の材料の完全な分離等を規定するとともに、トレーサビリティ・
システムの確立のための畜産副産物に係る出し手・受け手双方の記録付け、商業上
の書類や衛生証明書等の添付等を義務付けている。
これは、特定危険部位(SRM )などの高い危険性を有する畜産副産物をフードチ
ェーンから完全に排除する措置を既に講じてはいるものの、畜産副産物の飼料利用
が豚コレラなどの家畜疾病、ダイオキシン汚染を広めたと考えられており、畜産副
産物の不適切な利用が人間の健康を脅かす可能性があることから、畜産副産物につ
いての包括的な規制が必要と考えたためである。
同規則の構成は、以下の通りとなっている。
第1章:総則
第1条:適用範囲
第2条:定義
第3条:一般的義務
第2章:畜産副産物の分類、回収、輸送、廃棄、処理、使用および中間貯蔵
第4条:第1種物質
第5条:第2種物質
第6条:第3種物質
第7条:回収および輸送、貯蔵
第8条:畜産副産物および加工製品の他の加盟国への発送
第9条:記録
第3章:中間工場、貯蔵施設、焼却および混合焼却施設、第1種および第2種処理
工場、第2種および第3種油脂化学工場、バイオガス工場およびたい肥工場の認可
第10条:中間工場の認可
第11条:貯蔵施設の認可
第12条:焼却および混合焼却施設の認可
第13条:第1種および第2種処理工場の認可
第14条:第2種および第3種油脂化学工場の認可
第15条:バイオガス工場およびたい肥工場の認可
第4章:飼料原料、ペットフード、犬用ガムおよび工業製品として使用され得る加
工された動物性たんぱく質およびその他の加工製品の市販および使用なら
びに関連する工場の認可
第16条:一般的家畜衛生に関する規定
第17条:第3種処理工場の認可
第18条:ペットフード工場および専門工場の認可
第19条:飼料原料として使用され得る加工された動物性たんぱく質およびその
他の加工製品の市販および輸出
第20条:ペットフード、犬用ガムおよび工業製品の市販および輸出
第21条:予防措置
第22条:使用の制限
第5章:特例
第23条:畜産副産物の使用に関する特例
第24条:畜産副産物の廃棄に関する特例
第6章:管理および査察
第25条:工場による自己検査
第26条:公的な管理および認可された工場のリスト
第7章:輸入禁止およびEU委員会による管理
第27条:加盟諸国におけるEU委員会による管理
第8章:特定の畜産副産物およびそれに由来する製品の輸入および通過に適用され
る規定
第28条:一般的規定
第29条:輸入禁止およびEU規則の規定および順守
第30条:同等性
第31条:EU委員会による査察および監査
第9章:最終条項
第32条:附則の修正および経過措置
第33条:法的手続き
第34条:科学委員会への諮問
第35条:国内規定
第36条:財政上の取り決め
第37条:廃止
第38条:施行
附則1:特別な定義
附則2:畜産副産物および加工製品の回収および輸送に関する衛生基準
第1章:識別
第2章:車両およびコンテナ
第3章:商業書類および衛生証明書
第4章:記録
第5章:書類の保存
第6章:温度条件
第7章:通過に関する特定の規則
第8章:規制措置
附則3:中間工場および貯蔵施設に関する衛生基準
第1章:中間工場の認可に関する基準
第2章:一般的基準
第3章:貯蔵工場の認可に関する基準
附則4:指令2000/76/ECの適用されない焼却施設および混合焼却施設に関する
基準
第1章:一般的条件
第2章:運転条件
第3章:排水
第4章:残留物
第5章:温度測定
第6章:異常作動
附則5:第1種、第2種および第3種物質の処理に関する一般的衛生基準
第1章:第1種、第2種および第3種処理工場の認可に関する一般的基準
第2章:一般的衛生基準
第3章:処理方法
方法1、方法2、方法3、方法4、方法5、方法6、方法7
第4章:製造の監督
第5章:検証手続き
附則6:第1種および第2種物質の処理ならびにバイオガス工場およびたい肥工場
に関する特別な基準
第1章:第1種および第2種物質の処理に関する特別な基準
第2章:バイオガス工場およびたい肥工場の認可のための特別な基準
第3章:レンダリング油脂を加工する際の処理に関する基準
附則7:飼料原料として利用可能な加工動物性たんぱく質およびその他の加工され
た製品の処理および販売に関する特別な衛生基準
第1章:第3種処理工場の認可のための特別な基準
第2章:加工動物性たんぱく質に関する特別な基準
第3章:血液製品に関する特別な基準
第4章:レンダリング油脂および魚油に関する特別な基準
第5章:牛乳、乳製品および初乳に関する特別な基準
第6章:ゼラチンおよび加水分解たんぱくに関する特別な基準
第7章:燐酸2カルシウムに関する特別な基準
附則8:ペットフード、犬用ガム、工業製品の販売に関する基準
第1章:ペットフードおよび工業製品の工場の認可に関する基準
第2章:ペットフード、犬用ガムに関する基準
第3章:たい肥およびたい肥製品に関する基準
第4章:ウマ血清を除く、医薬品、実験資料などの工業目的に使用される血液お
よび血液製品に関する基準
第5章:ウマ血清に関する基準
第6章:有蹄動物の皮および皮膚に関する基準
第7章:はく製に関する基準
第8章:羊毛、体毛、豚毛、羽毛等に関する基準
第9章:養蜂製品に関する基準
第10章:飼料、有機肥料または土壌改良資材以外の使用を目的とする骨および
骨製品(骨粉をのぞく。)、角および角製品(角粉をのぞく。)および
蹄および蹄製品(蹄粉を除く。)に関する基準
第11章:ペットフード、医薬品およびその他の工業製品の製造のための家畜副
産物
第12章:油脂化学製品のためのレンダリング油脂
附則9:第23条の2に従い特定の第2種分類、第3種分類の畜産副産物を特定の
動物への飼料として使用する際に適用される規則
附則10:特定の畜産副産物およびその畜産副産物から作られた製品を第3国から輸
入するための衛生証明書の様式
附則11:人間の食用ではない食肉副産物の輸入を加盟国が認可できる第3国のリスト
本規則制定前に実施してきた措置
科学的な助言に基づき、家畜疾病が拡大することを食い止め、または再発生を防
ぐため、畜産副産物等に対する以下のような措置を既に導入。
第二次BSE危機以前(2000年以前)
・牛、山羊および羊へ、反すう家畜由来たんぱく質を飼料として給与することを
禁止(1994年7月以降)
・反すう家畜由来畜産副産物に対する加工基準の強化(133℃、3気圧で20分間処
理)(1997年4月以降)
・BSEの早期検出、抑制および撲滅のための飼養頭数規模に応じたBSE抽出検査
(active surveillance)の実施(1998年5月以降)
・牛、山羊および羊の特定危険部位(SRM)の人間の食料や家畜の飼料からの除去
(2000年10月以降)
第二次BSE危機以降(2001年以降)
・へい死家畜の飼料利用の禁止
・家畜への肉骨粉の給与の一時的全面停止
・30カ月齢を超える食用向けの牛に対するBSE検査の実施
・特定危険部位(SRM)の対象部位の拡大
|
|
(1)畜産副産物の分類と処理
@ 畜産副産物の定義
この規則では、「畜産副産物」は、家畜の全体または一部分、もしくはこれらな
どから作られたものであり、人間の食用向けではないものと定義している。これに
は、農場でへい死した家畜や、レストランやケータリング業者の施設から排出され
る食品廃棄物が含まれる。
A 畜産副産物の分類と処分方法等
家畜、 公衆衛生または環境への潜在的危険性の大きさに基づいて畜産副産物を3
つに分類するとともに、各々の分類ごとに、その回収、輸送、貯蔵、処理、焼却な
どについて、一般的衛生基準を規定している。
○ 第1種物質(危険度大)
この分類には、TSEの患畜、TSE撲滅のために殺処分された家畜、SRM が除去され
ていない家畜の死骸などや、指令 96/22/ECにより禁止された物資(ホルモン剤)
を投与された動物に由来する製品および指令 96/23/ECの附則T・のB群(3)に
記載された環境汚染物質を含む動物由来製品で、 その残留が許可された水準を上
回るものが該当する。ペットやサーカスの動物の死がいもこのカテゴリーとなる。
この分類のものは、直接または加盟国の所管官庁が本規則の要求事項を満たしてい
るとして認可した「第1種処理工場」で適切に熱処理した後、 加盟国の所管官庁が
本規則または廃棄物焼却に係る指令2000/76/ECに定められた要求事項を満たして
いるとして認可した「焼却施設」において焼却等しなければならない。
○ 第2種物質(危険度小)
この分類には、農場でへい死した家畜や家畜疾病(TSEを除く。) の抑制等のた
めに農場でと畜された家畜、動物医薬品が残留している危険性を有するものなど他
の家畜疾病により汚染されている危険性を有するもの、家畜ふん尿、消化管内容物
などが該当する。
この分類のものは、焼却処分のほかに、所管官庁が認可した「第2種処理工場」 に
おいて加工された後、それぞれ所管官庁が認可した「たい肥工場」、「バイオガス
工場」、「油脂化学工場」で原料として利用することができる。
○ 第3種物質
この分類のものは、人間の消費のためにと畜された健康な家畜などから生じた畜
産副産物や、反すう動物以外の家畜の血液、皮、角、羽根のほか、食品廃棄物や利
用済みの食用油が含まれる。
この分類のものは、焼却処分、「たい肥工場」、「バイオガス工場」、「油脂化
学工場」で原料として利用するほか、所管官庁が認可した「第3種処理工場」で適
切に処理された後、家畜の飼料として利用することができる。
なお、第1種物質と第2種物質または第3種物質の混合物は第1種物質に、第2種物
質と第3種物質の混合物は第2種物質に分類すると定められている。
B 分類ごとの完全な分離、トーレサビリティーの確立
利用することが認められていない畜産副産物が製品の原料となる危険性を排除す
るため、収集、運搬、保管、取り扱いおよび加工のすべてにおいて各分類のものは
完全に他のものと分離されなければならない。これを確実にするため、本規則では
すべての施設・工場について基準を定め、加盟国の所管官庁がこの基準を満たして
いる施設・工場を認可することとしている。
また、それぞれの積荷について各段階において出し手と受け手の双方が記録を残
すこと、商業上の書類や衛生証明書等を添付することとしてトレーサビリティ・シ
ステムを構築することが規定されている。ただし、家畜のふん尿については、同一
農場内や同一加盟国内に所在する農場間および利用者間において輸送される場合は、
この記録付けは免除されている。
(2)同じ種の中での再利用(共食い)の禁止
この規則では、これまではBSE対策の暫定措置として一時停止措置とされてきた
「同じ種の中での再利用(共食い)」を全面的に禁止している。
一方、第3種物質に分類される畜産副産物については、将来、 反すう家畜ではな
い家畜、 つまり豚や家きんへの飼料利用を 再び認めることとなった場合に備え、
「安全な肉骨粉の製造に関する基準」を規定しており、また、毛皮用家畜、動物園
やサーカスの動物に対しては、各国の所管省庁の監督の下であれば、第 2種物質ま
たは第3種物質の畜産副産物を飼料として給与しても構わないと規定している。
しかし、このような畜産副産物の飼料利用はあくまでも将来のまたは限定的なも
のであり、現在のEUにおける肉骨粉の家畜への給与の全面的停止措置に影響を与え
るものではないとEU委員会は説明している。
(3)食品廃棄物の飼料利用の禁止について
食品廃棄物の飼料としての利用は、農家経営のみならず社会全体に大きな損失を
もたらした2001年のイギリスにおける口蹄疫の発生等数多くの家畜疾病の原因の 1
つとされている。こうしたことから、食品廃棄物については、バイオガス工場での
材料として利用するかたい肥化すべきとしている。
5月中旬、EU委員会は、フードチェーンおよび家畜衛生に関する常設委員会から出
された意見等を踏まえ、 本規則の一部を改正する委員会規則のほか、本規則の円滑
な実施のための移行措置や恒久的措置等に関する委員会規則など 16の規則等を施行
し 5月1日にさかのぼって適用した。この移行措置等は、各国からの申し出とそれら
の国において既に実施されている内容等の衛生条件等を基に判断したものである。
その概要を示すと以下の通りとなる。
1 畜産副産物規則((EC)No1774/2002)の改正(委員会規則(EC)No808/2003)
対象国:全加盟国
概 要:小規模の焼却施設等(指令2000/76/ECが適用されないもの。)にお
いて、焼却できるものとしてペット動物の死がい、第2種物質および
第3種物質に加え、SRMおよびSRMが除去されていない家畜の死体を追
加。また、付則1から9についてそれぞれ一部を改正した。
2 第3種物質およびふん尿のたい肥工場における処理等の基準に関する移行措置
(委員会規則(EC)No809/2003)
対象国:全加盟国
移行期間:2004年12月31日まで
概 要:附則6の第2章のA、C、D(たい肥工場およびバイオガス 工場の認可の
ための、施設、処理、製造および残さについての基準)を適用除外と
し、加盟国の国内法に基づいて本規則と同等の要求事項が満たされて
いること等を条件に、 既存のたい肥工場に対する各加盟国の認可を
2004年12月31日まで延長することができる。
3 第3種物質およびふん尿のバイオガス工場における処理等の基準に関する移行措置
(委員会規則(EC)No810/2003)
対象国:全加盟国
移行期間:2004年12月31日まで
概 要:附則6の第2章のA、C、D(たい肥工場およびバイオガス工場の認可のた
めの、施設、処理、製造および残さについての基準)を適用除外とし、
加盟国の国内法に基づいて本規則と同等の基準が満たされていること
等を条件に、既存のバイオガス工場に対する各加盟国の認可を2004年
12月31日まで延長することができる。
4 養殖魚由来の飼料の同じ種の魚への給与禁止、農場における家畜と体の埋却と
焼却に関する実施に関する移行措置(委員会規則(EC)No811/2003)
対象国:全加盟国
概 要:養殖された魚の残さを、同じ種の養殖魚に飼料として給与することが
禁止されたが、この措置は2003年12月31日までは適用せず、現行の基
準に基づいたえさの給与を行うことができる。
また、野生の魚から得られた動物性たんぱく質については、これを
同種の養殖の魚に給与することができる。
一方、伝染病が発生した場合などの緊急時または遠隔地におけるへ
い死家畜の処分については、施設の処理能力の限界や、焼却施設まで
運搬すると疾病の被害を拡大してしまう恐れがあることなどから、
SRM が取り除かれていない牛などの家畜の死体を焼却施設等の施設以
外の場所で焼却したり埋却したりすることが避けられない場合が想定
される。
このような場合は、所管官庁の承認と監督の下であればこのような
処分方法を認めているが、このような緊急時または遠隔地で行われる
例外的な処分の実施にあたっては、所管官庁がへい死家畜などの処分
の実施を監督すること、焼却責任者が、焼却を行った量、畜産副産物
の分類、動物の種、実施年月日、場所等を記録することなどの要件が
定められた。
5 第三国からの畜産副産物の輸入等に関する移行措置
(委員会規則(EC)No812/2003)
対象国:全加盟国
移行期間:2003年12月31日まで
概 要:附則7および8に示される製品(血液製剤、油脂などやペットフードなど)
については、第33(2)に基づいて作成され、更新される第三国リスト
に記載され国から輸入されなければならないとされたが、 輸入可能な
第三国のリストの作成・承認が行われていないことから、2003年 12月
31日までは本規則の規定または既存の16のEU規則に則って、加盟国は、
第三国からの輸入を行うことができる。
6 食品廃棄物の収集、運搬および廃棄に関する移行措置
(委員会規則(EC)No813/200)
対象国:全加盟国
移行期間:2005年12月31日まで
概 要:第6条の2のfおよび第7条(回収、輸送および貯蔵、バイオガスおよびた
い肥工場への輸送についての基準)を適用除外とし、加盟国の国内法に
基づいて食品廃棄物が第1種物質および第2種物質と混合されないことを
確実としていること、また、国内法が本規則において定めるその他の規
定に従っていることを条件に、第6条の 1の f に定める畜産副産物(食
品残さ以外の食品廃棄物)の収集、運搬業者に対する各加盟国の認可を
2004年12月31日まで延長することができる。
7 ほ乳類の血液の処理基準に関する移行措置
(委員会決定2003/321/EC)
対象国:ドイツ、スペイン、イタリア、イギリス
移行期間:2004年12月31日まで
概 要:附則7の第2章の1(ほ乳類の血液の処理等に関する要求事項)を適用除外
とし、施設、原料、加工処理基準等が同附則第1章の基準に従っているこ
と等を条件に各加盟国が、ほ乳類の血液を処理する施設が「方法1」の処
理方法(中心温度が133℃で3気圧の条件下で20分以降加熱処理すること)
以外の方法2〜5または 7の方法で処理することについての認可を 2004年
12月31日まで延長することができる。
8 ハゲワシ類への第1種物質の畜産副産物をえさとして給与することに関する実
施規則(委員会決定2003/322/EC)
対象国:ギリシャ、スペイン、フランス、イタリア、ポルトガル
概 要:SRMが除去されていない家畜のと体を、死体を食する鳥のえさとして利用
することが認められたが、 その際の対象となる絶滅が懸念される品種、
えさとして給与することを 各国の所管省庁が許可する際の基準等が定め
られた。
9 中間処理工場における第1種および第2種物質の第3種物質からの完全な分離に関する
移行措置(委員会決定2003/323/EC)
対象国:フランス、イタリア
移行期間:2004年4月30日まで
概 要:中間処理工場の認可に当っての附則3第1章および第2章のBの6の基準を適
用除外とし、 加盟国の国内法に基づいて本規則と同等の要求事項が満た
されていることを条件に、 既存の中間処理工場に対する各加盟国の認可
を2004年4月30日まで延長することができる。
10 毛皮用家畜への同じ種の畜産副産物の飼料利用禁止に関する例外規定
(委員会決定2003/324/EC)
対象国:フィンランド
概 要:畜産副産物を給与された毛皮用家畜から得られた畜産副産物などが毛
皮用家畜以外の家畜のえさとならないような措置の実施、記録の保存、
TSE検査の実施などを条件に フィンランドにおいては登録されている
農家において、毛皮用家畜(キツネ等)に、同じ種から得られた畜産
副産物をえさとして給与することができる。
11 第1種、第2種および第3種物質の加工工場の分離に関する移行措置
(委員会決定 2003/325/EC)
対象国:フランス、フィンランド
移行期間:フランスは2004年4月30日、フィンランドは2005年10月31日まで
概 要:附則6の第1章の1(バイオガスおよびたい肥工場の認可のための基準の
うち、第1種および第2種物質を扱う工場において、ラインを分離するこ
と)および附則7の第1章の1(第3種処理工場は、第1種および第2種処理
工場と同一の場所に存在してはならない)を適用除外とし、国内法に基
づいて本規則と同等の基準が満たされていることを条件に、既存の工場
に対する各加盟国の認可をそれぞれの期限まで延長することができる。
12 第2種および第3種物質の油脂化学工場の分離に関する移行措置
(委員会決定2003/326/EC)
対象国:ベルギー、ドイツ、スペイン、イタリア、オランダ、スウェーデン、
イギリス
移行期間:2005年10月31日まで
概 要:第14条の2(第2種および第3種油脂化学工場の認可に当たっての基準を
適用除外とし、国内法に基づいて本規則と同等の基準が満たされている
こと(記録の保管、所管官庁による検査の実施など)を条件に、既存の
工場に対する各加盟国の認可を2005年10月31日まで延長することができ
る。
13 家畜の特定危険部位および特定危険部位を含むと体を焼却しない小規模の焼却
施設に関する移行措置(委員会決定2003/327/EC)
対象国:フィンランド、イギリス
移行期間:2004年12月31日まで
概 要:第12条の3(一般的に養鶏場、養豚場、猟犬の飼育場などで行われてい
る小規模の焼却施設の認可に当たっての基準)を適用除外とし、 灰の適
切な処理、処理した日付、量などの記録付け等を条件に、 これらの施設
に対する各加盟国の許可を2004年12月 31日まで延長することができる。
14 豚の飼料給与に対する第3種物質の食品廃棄物の使用及び同じ種の中での再利用の禁
止に関する移行措置(委員会決定2003/328/EC)
対象国:ドイツ、オーストリア
移行期間:2006年10月31日まで
概 要:第22条の1のa、b(1つiの種に対する同一種に由来する動物性たんぱく質
の給与の禁止。毛皮用家畜等以外の家畜に対する 食品残さもしくは食品残
さを含む飼料の給与の禁止)を適用除外とし、利用される第3種物質が加盟
国のレストランや ケータリング施設等などからの食品残さのみであること
などを条件に、 豚に対して食品残さもしくは食品残さを含む飼料を給与す
ることができるとの既存の決定を2006年 10月31日まで延長することができ
る。
15 ふん尿の熱処理に関する移行措置(委員会決定2003/329/EC)
対象国:ベルギー、フランス、オランダ、フィンランド
移行期間:2004年12月31日まで
概 要:附則8の第3章の5のb (肥料等の市販の条件:最低70℃で最低60分間熱処
理を受けたもの)を適用除外とし、 国内法に基づいて本規則と同等の基準
が満たされていること (記録の保管、所管官庁による検査の実施など)を
条件に、 既存の工場に対する各加盟国の認可を 2004年12月31日まで延長す
ることができる。
16 汚水処理時に収集された畜産副産物に関する移行措置(委員会決定2003/334/EC))
対象国:デンマーク、スペイン、フランス、アイルランド、イタリア、
オーストリア、ポルトガル、フィンランド、スウェーデン
移行期間:2003年12月31日
概 要:第1種または第2種処理工場や特定危険物質の除去を行うと畜施設におい
て、動物由来の物質を汚水から回収すること等の基準を適用除外とし、
回収されるスクリーンかすなどがそれぞれ第1種物質または第2種物質と
して回収、運搬、処分されること等を条件に、既存の施設に対する加盟
国の認可を2003年12月31日まで延長することができる。
また、デンマークにあっては、上記に加え、 他の家畜等へ与える危険
性がほとんどないと所管官庁から評価されることを条件に、回収される
スクリーンかすなどを、事前に加圧・加熱処理することなくバイオガス
工場に輸送を行うことに対する許可を2005年5月1日延長することができ
る。
この畜産副産物規則の適用は、畜産副産物のこれまで以上の厳格な取り扱いと処
分を求めていること、利用方法を制限していることなどから、規則に適応するため
の施設の改修のほかに、回収、運搬、処分などにもこれまで以上の経費を要するこ
とになるなどEUの食肉をはじめとする関連産業に大いなる経済的影響を及ぼすこと
となる。
食肉関連部門への支援
EUにおいては、「汚染者負担の原則」つまり汚染物質の排出者に処分する責任が
あるという考えから、畜産副産物を排出したと畜部門に処分する責任があり、処分
に係る費用も負担することとしている。
また、加盟国の一部の国がと畜部門に対し助成を行うことは、EU内での公正な競
争をわい曲する可能性があることから、EU委員会は、各国が、と畜場から排出され
る畜産副産物等の処分経費や、その他のと畜場運営のための経費を助成すべきでな
いとし、2004年以降は各国が畜産副産物の処分経費について助成することを認めな
いとしている。
このため、各国による畜産副産物の処分に関すると畜部門への支援は、血液など
の畜産副産物の回収、保管、施設等の清掃、消毒等に関する技術的情報の提供等に
よる支援のみとなるものと考えられる。
欧州全体としての影響額
EU委員会が2001年に行った加盟各国に対する調査によれば、BSEの発生とこれに
対応するための措置の実施による畜産副産物の価値の損失額 (レンダリング処理
による価値の上昇分を含む畜産副産物の販売による収入)が約 15億ユーロ、飼料
の原料として、畜産副産物を他のものに置き換える費用が約7億ユーロと推計され
ている。また、EU の食肉関連産業は畜産副産物の廃棄に係る費用を負担しなけれ
ばならないが、この金額を約30億ユーロと推計している。
以上から、EUの食肉関連産業が負担しなければならない、畜産副産物の処分のた
めの費用の総計は、約52億ユーロと推計される。
これら費用の大部分は、一義的にはと畜場や食肉加工施設など食肉関連産業が負
担しなければならないだろうが、ゆくゆくは畜産農家へは低い畜産物価格として、
食肉加工業者や流通業者には高い畜産物価格として転嫁されることとなるものと見
られている。
表1 EUにおける肉骨粉の飼料利用禁止に伴う影響額(2000年時点の推計)
資料:EU委員会 ※1ユーロ=138円
EU委員会によれば、この規則の適用により、飼料に第1種および第2種物質の畜産
副産物が混入することを排除することとなり、・家畜の飼料に疾病の伝達物質や許
容限度を超える濃度の残留物質が入る危険性を削減できること、・食用に適してい
ないものが食品に入っていると感じている消費者の信頼を回復することとなり畜産
副産物関係産業のイメージが向上すること等のメリットを挙げている。一方、今回
の規則は、関係者に大きな負担を求めることとなっているが、この規則の順守によ
り、EU委員会が考えるメリットを関係者全員が感じられるようになり、安全な畜産
物および関連製品の供給が行われ、安定的な消費が行われることを通じ、関係者の
努力が報われることを期待しつつ、今後とも、本措置の適用状況を見ていきたい。
参考資料
畜産副産物規則(1774/2002/EC)ほか関係規則
EU委員会資料
元のページに戻る