農畜産物へのSARSの影響 ● 中国
6月24日にSARSの感染地域指定が解除
世界保健機関(WHO)が6月24日、最後に残っていた北京市の渡航延期勧告および
感染地域指定を解除したことで、中国におけるSARSは事実上の終息を迎えた。しか
し、SARSの農産物への影響は多方面に現れ、特に家きん肉類輸出の停滞や養鶏、養
豚の収益悪化、さらに、大豆かすやトウモロコシなどの飼料原料の輸出にもその影
響が波及した。
中国糧油食品進出口(集団)有限公司の家きん類輸出の担当者は「最大の問題は、
製品の流通」で、「北京市については、多くの貨物が厳しい検査を受けなければな
らない状況となった。多くのトラックが北京市から出られず、運転手もあまり遠方
へは出たがらなかった。他の都市の状況も同様で、国内の家きん肉類の販売経路が
妨げられ、多くの地域の製品が、同じ省内のみで流通および消費された。」と説明
している。
鳥インフルエンザにより輸出はさらに低迷
中でも家きん肉類の輸出は、SARSウイルスが動物からの感染による可能性がある
と報告されたことで、多くの国と地域で主要な生産地域である広東省からの家きん
肉類の輸入を禁止する措置が取られるなど、大きな影響を受けた。また、湖南省糧
油進出口公司の 4月の香港およびマカオへの豚肉輸出は前年同月比87%の激減、日
本への肉類製品の輸出も50%の減少となった。
さらに、山東省から日本へ輸出されたアヒル製品から鳥インフルエンザ・ウイル
スが検出されたため、 5月12日、日本は中国からの家きん類製品の輸入を一時的に
停止した。日本向けの輸出量は、全輸出量の40〜60%を占めることから、中国の家
きん肉輸出は追い討ちをかけられる結果となった。また、EUは、昨年から抗生物質
などの残留問題により中国産動物製品の輸入を禁止しており、この措置は一部解除
されたものの、依然として継続していることから、輸出をめぐる状況はきわめて深
刻といえ、貿易の正常化には3、4カ月かかるものと見られている。
飼料原料の輸出入への影響も大きく
SARSによる食肉類の消費低迷、畜産業への影響から、国内飼料の消費量も減少し
ている。江蘇、河北、広東などの大手飼料メーカーを対象とした調査によると、4
月のこれら企業による飼料生産量は前年同期比で約30%の減少となった。
飼料原料の輸入を見ると、国内畜産業の収益の低下から、飼料業界も低迷してお
り、大豆の輸入が減少している。すでに成約済みとなっていた米国からの船積みを
中止した業者もあり、今後の飼料生産計画の調整が図られていると見られる。
一方、トウモロコシについては、鉄道輸送がSARS 対策のための物資を優先した
ため、主産地である東北地方のトウモロコシの輸送に大きく影響し、輸出は減少し
ている。中国国際期貨経紀(先物取引)公司の担当者によると、 5月以来、トウモ
ロコシの輸出は大幅に減少しているものの、SARSが沈静化すれば、通常ベースであ
る月 100万トン以上の水準をすぐに取り戻すことができるだろうという見通しを示
している。
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