2003年の生乳生産量はほぼ前年並み

◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 国別ではドイツなどが増加、 フランスなどが減少 ● ● ●

 ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、2003年のEU(15カ国)の生乳生産量(乳業会社への出荷量)は、乳用牛の飼養頭数の減少や夏の猛暑などの影響が懸念されたにもかかわらず、前年比0.7%増の約1億1,559万トン(暫定値)となった。

 国別に見ると、EU最大の生乳生産国であるドイツでは、域内および域外向けのチーズ輸出量が大幅に増加していることなどから、生乳生産を拡大しており前年比2.7%増の約2,756万3千トンとなった。また、国内の乳価が堅調なイギリス、域外向けチーズ輸出が順調なオランダでも、それぞれ1.6%増の約1,455万4千トン、3.3%増の約1,069万トンとなった。

 一方、ドイツに次ぐ生乳生産国のフランスでは、猛暑などの被害を大きく受けたことに加え、乳価があまり芳しくなかったことから、前年比2.0%減の約2,315万6千トンとなった。また、猛暑などの被害を受けたスペイン、ポルトガルでは、それぞれ3.1%減の577万1千トン、6.1%減の181万7千トンとなった。   
  

2003年のEUの生乳生産量
(単位:千トン)
資料:ZMP

● ● ● 生乳生産割当制度が域内生乳需給に大きく寄与 ● ● ●

 EUの生乳生産は、1984年以降域内での生乳市場の需要と供給のバランスを保つことを目的として導入された生乳生産割当(クオータ)制度により、安定的に推移している。当該制度は、対象期間を毎年4月から翌年3月として、各加盟国ごとに各年のクオータが定められており、これを超過した分について、課徴金(生乳指標価格の115%)を課す仕組みとなっている。欧州委員会によると、2002/03年度(クオータ量:約1億1,890万トン)は、イタリアやオーストリアなど9カ国で約90万トンの超過となり、これに伴う課徴金は約3億1,900万ユーロ(約433億8千万円、1ユーロ=136円)となった。

 なお、クオータ制度については、昨年6月の共通農業政策改革合意で2014/15年度まで存続が決定され、EU(15カ国)では1億2,000万トン程度までの増加が行われることになる。

● ● ● イギリスなどは超過、イタリアは収まる可能性 ● ● ●

 現在、生乳生産が増加傾向にある国の2003/04年度の出荷クオータ量(農家から乳業会社への出荷量)と、2003年4月〜12月の生産量および2003年1月〜3月の生産量で試算すると、2003/04年度は、今のところイギリスとデンマークでクオータ量を超過する可能性がある。過去10年で9回クオータ量を超過しているイタリアは、クオータの範囲内に収まる可能性がある。

生乳生産が増産傾向にある国の
クオータ超過に関する試算
(単位:千トン)
資料:ZMP等
 注:(1)は2003年4月〜12月の生乳生産量、(2)は2003年1月〜3月の生産量


元のページに戻る