農業部門の伸び率、わずかに減速
フィリピン農務省農業統計局(BAS)は1月中旬、2003年の農業生産統計を公表した。それによると、85年の価格に換算した農業総生産額は前年比3.8%の増加となった。伸び率は2002年前年比の4.1%からわずかに後退している。同国農務長官は、昨年は干ばつや台風に相次いで見舞われ、例年に比べ好条件であったとは言えないものの、当初見込みの前年比3.5〜4%増となったとして、2004年についても3〜4%の伸び率を目標としたいとしている。
食肉生産量の動向
品目別の概要はつぎのとおり
○ 豚肉(伸び率はわずかに減速)
生産額は4%の増加、前回の5.3%増からはわずかに減速したかたちとなっている。
同国では、豚肉、鶏、トウモロコシ、砂糖などのセンシティブ品目について高関税率の代償措置として関税割当枠のミニマムアクセス量(MAV)を設定している。2003年の豚肉における割当数量は約5万600トン、12月末日現在の消化率は15%と公表されているが、同国では近年密輸による非公式ルートでの輸入が増加しており、これがMAV枠消化率を引き下げる要因と考えられている。
○ 鶏肉(伸び率はやや減速)
生産額は前年比1.3%の増加、前回の6.8%増からやや減速している。MAV割当数量は2万1,900トン、年末時点での消化率は95%とされている。同国は1月末現在、アジア地域では数少ない鳥インフルエンザの発生が確認されていない国であるため、政府は官民挙げての対策委員会を設置し、対策を整える一方、輸入国からの輸出の可能性に関する問い合わせなど、対応に追われている。なお2002年の鶏肉輸出量は速報値で約2万5,000トン、これは輸入量の約2倍、生産量の62万7,000トンの約4%に相当する(地鶏・廃用採卵鶏を含む)。
○ 牛肉(減少傾向を維持)
生産額は前年比1%減少、前回の0.04%減からさらに加速している。
同国食肉加工協会は近年の国内食肉需給がひっ迫しつつあるとして、インド産水牛肉の一部加工品について規制緩和するよう政府に求めている。
○ 牛乳・乳製品生産量の動向
生産額は前年比2.3%の増加、前回の1.9%増とほぼ同じ水準で推移している。同国では全国酪農公社(NDA)を中心として国内酪農振興を図っているものの国内生産は全需要の1%以下の水準で伸び悩んでいる。NDAの資料によると、従来豪州、NZ産が牛乳・乳製品全輸入量の60〜70%を占めていたが、2003年の1月〜9月までの輸入状況ではタイからの輸入が全体の18%と増加し、代わりに従来最大手の輸入相手であった豪州産が2002年の37%から18%にまで減少しているのが特徴的である。これと対照的にNZ産は全体の37%で最大の輸入相手となっている。また、これに連動するようにNZからの乳用牛の生体輸入による国内酪農振興の動きが近年活発になっている。
トウモロコシの緊急輸入を検討
食料局のデータによると、同国の1月現在のトウモロコシ備蓄量は21万4,000トン、前年同期の23万3,000トンに比べ約8%少なく、2004年上半期中に供給不足による畜産物価格等への影響が生じることが懸念されるため、第2四半期中に35万トン程度の無税による輸入を検討しているとしている。
2003年のMAV割当数量は20万2,500トン、年末時点での消化率は24%とされている。
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