米豪FTA合意、米国畜産関係団体の反応


畜産物に関する合意は課題未解決のまま

 ゼーリック米通商代表は2月8日、豪州との自由貿易協定(FTA)交渉について両国が合意に至ったと発表した。

 米通商代表部が公表した合意概要によると、畜産物では、当該FTAによる利益の享受が期待される豚肉については、協定の発効と同時に関税が撤廃される。しかし、懸案の動物検疫問題については、米豪双方の当局が動物検疫に関する二国間問題について科学的な協力を行うための仕組みを構築すること、両国の動植物検疫当局間で、科学に基づいた措置を発展させていくための技術検討会を立ち上げることについて合意したとされており、今後の検討に委ねられることとなった。

 牛肉については、18年間の関税割当(TRQ)を設定し、当初米国の牛肉生産量の約0.17%に相当する数量を増加させる。これは、現在の米国の輸入量の1.6%に相当する。ただし、TRQの拡大は米国の牛肉の輸出がBSEの発生以前の状況まで回復するか、協定の発効の3年後のいずれか早い時期まで行わない。TRQの拡大開始以降は、高品質牛肉への市場の混乱防止のための、価格ベースのセーフガードの発動が可能となる。

 また、乳製品については、現行の関税割当の最恵国待遇に基づく適用については何ら変更を行わないが、FTAに基づいて創設されるTRQについては、毎年、米国の乳製品の年間の総生産額の0.17%に相当する数量を増加させる。これは、現在の米国の乳製品の輸入量の約2%に相当する。ただし、追加的な輸入は商品金融公社(CCC)の価格支持プログラムの操作に影響を与えないとされている。

 今後、上記の合意の詳細について両国政府間で更に話し合いが進められる。

米国畜産関係団体の評価

 米国の畜産関係団体は9日、相次いで当該FTAに関する声明を公表した。

全国豚肉生産者協議会(NPPC)

 NPPCのジョン・カスパース会長は、「FTAにより与えられた多くの豚肉製品の関税撤廃の恩恵を享受できる状況にないが、このようなFTAを支持する。また、2003年8月に豪州が輸入危険度評価に着手したことを歓迎するが、最終的な評価が終了されなくてはならない」との声明を公表した。

全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)

 NCBAは、米豪FTAについて、米国への市場アクセスを増加させる二国間合意については、多国間交渉と平行して処理されるべきであるとのNCBAの基本方針にそぐわないとして、これを批判する声明を公表した。また、当該FTAにおいて砂糖の例外が設けられたことについて、将来における悪しき前例となるとした。ただし、牛肉輸出再開までの移行措置やセーフガード措置が設けられたことについては評価するとした。

全国生乳生産者連盟(NMPF)

 NMPFのジェリー・コザック会長は、「我々の最良とする希望は交渉を通じて実現されなかったが、米国の高関税と枠外税率の削減は行わないとの目標は達成しており、最悪の状況ではない」との声明を発表した。また、今後の議会による当該FTAの承認に向け、この合意が実施された場合の経済的な影響の試算を行うとした。

◎米国下院からのヴェネマン農務長官への書簡

 米国下院政府改革委員会は17日、ワシントン州で摘発されたBSE陽性牛が歩行困難牛(ダウナー)ではなかったとと畜場関係者が証言しており、当該牛の脳の採材はダウナーという理由で行われたものではなく、この事実について目撃者から米農務省にFAXが送られていたとされる問題に関し、3月2日までに、BSE陽性牛の採材等について文書で回答するよう要請する書簡をベネマン農務長官に送付した。


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