米国ブッシュ政権2003年貿易白書を議会に提出


関税の緊急措置発動や検疫に懸念を表明

 米国通商代表部(USTR)は3月1日、ブッシュ政権が議会に提出した2003年貿易白書を公表した。同白書では、ブッシュ政権による2003年における成果や2004年における貿易上の課題などが概説されている。

 わが国の農業関係および世界貿易機関(WTO)農業交渉に関する記述の概要は以下の通り。

冷蔵牛肉の関税の緊急措置

 2003年8月1日から日本で発動された冷蔵牛肉の関税の緊急措置については、米国は当該措置が輸入の急増に直面した国内生産者を救済することを意図する措置であると理解しているが、2003年は2001年に牛海綿状脳症(BSE)感染牛が発見されたことにより2002年の牛肉の輸入量が顕著に減少した状況から回復したものであり、国内生産者が救済を必要とする状況にはなかった。関税の緊急措置の発動は、この回復をおびやかしたのみならず、米国の牛肉生産者および日本の消費者に害を与えた。今回の発動は2004年3月末で終了するが、日本政府が規定を見直さない限り2004年度においても再び発動する可能性がある。米国政府は政府間の協議のみならず公の場でも繰り返し本件を取り上げてきた。関税の緊急措置が適切に是正されるまで、米国は日本に対し措置を撤回し関税を通常の水準に戻すことを求める。

動植物検疫

 日本の動植物検疫措置の適用は米国の食品や農産物に多くの障壁を形成している。国際基準に準拠しない措置や科学的根拠の欠如した措置が適用されることに懸念を強めているとし、WTO紛争解決機関から措置の是正勧告が出された、リンゴ火傷病に関する措置等を例として挙げている。動物検疫措置については具体的な問題は列挙されていないものの、検疫問題について適当な二国間および多国間での会合を通じて解決を図って行くとしている。

 また、食品安全委員会について、日本の貿易に関する約束や、より良い科学に基づくWTO整合的な政策が推進されることが保証されるようにあらゆる機会を通じて監視していくとしている。

WTO農業交渉

 カンクンでの閣僚会合以降、農業特別会合は開催されていない。農業改革におけるモダリティー確立のための最近の進展段階を閣僚宣言案(デルベステキスト)は反映している。12月15日に開催された一般理事会では、これまでの進ちょくの確認と交渉を進めるための方策について議論が行われた。加盟国は貿易に関連する議論を再活性化させ、2004年の早い時期に交渉が再開されることが望ましいとした。

 交渉は2004年には、ラウンドを終了させることができるよう明確なモダリティーの確立に重点を絞ったものとする必要がある。議論を前進させるために、米国はすべての国が、3つの柱(市場アクセス、国内支持、輸出補助金)に対する野心を高めるよう努力していく。

◎モロッコ自由貿易協定交渉合意に至る

 USTRは3月2日、モロッコとの間で自由貿易協定について合意に至ったことを公表した。米国からモロッコへの輸出について、鶏肉・牛肉は新たな関税割当が設定され、既にモロッコと自由貿易協定を締結しているカナダやEUとの競争が可能となるとされている。ホエイ製品、ピザ用チーズおよび鶏肉加工品は即時関税撤廃が行われる。他方、米国のモロッコ産農産物に対する関税は基本的には15年間で段階的に削減し撤廃するとしている。

 ベネマン農務長官は2日、「この自由貿易協定はモロッコの3千万の消費者がより多くの農産物を求めることにより、より多くの交易をもたらたす一助となるであろう」と歓迎するコメントを公表した。


元のページに戻る