堅調に推移するEUのチーズ生産


◇絵でみる需給動向◇


●●●EU15のチーズ生産、前年同期比1.2%増●●●

 全世界の約4割と世界最大のシェアを占めるEUのチーズ生産は、堅調な域内消費に加え、世界的な需要増加を背景に年々増加を続けている。ドイツ市場価格情報センター(ZMP)によると、2004年1月から7月におけるEU15カ国のチーズ生産量は、主要生乳生産国のほとんどにおいて、生乳生産量が軒並み減少傾向で推移しているにもかかわらず、好調な域外輸出や域内の家庭消費量の増加などから、前年同期に比べて1.2%増の382万6千トンとなった。

 国別にみると、EU最大の生乳生産国であるドイツが同1.8%増の109万トン、ドイツに次ぐ生産国であるフランスでは同1.1%増の98万4千トンとなった。また、主要チーズ輸出国であるオランダでは同3.5%増の39万2千トン、生乳生産が回復傾向にあるイギリスでは同5.5%増の21万9千トンとなった。また、今後、チーズ需要の増加が見込まれている新規加盟国の中でも最大の生産国であるポーランドでは、同10.1%増の29万3千トンとかなりの増加となった。

表1 EU15のチーズ生産量
(単位:千トン、%)
資料:ZMP
 注:各年1〜7月の数値、スペインは6月までの数値。

●●●バター生産は4.1%減●●●

 近年、バターの消費量は、消費者の健康に対する関心の高まりから減少傾向にある。2004年1月から7月におけるバター生産量は、共通農業政策(CAP)改革による本年7月1日からの介入価格引き下げの影響や付加価値の高いチーズへの生産シフトなどにより、EU15カ国全体で4.1%減の103万6千トンとなった。

 国別にみると、ほとんどの加盟国で前年同期を下回り、ドイツ、フランスでは、それぞれ同3.3%減の26万9千トン、同6.1%減の25万5千トンとなった。また、ポーランドでは本年5月のEU加盟後、EU域内向け輸出が大きく増加するなど生産量は同10.9%増の9万6千トンとなった。

 なお、9月末時点のバターの介入在庫は、(1)同期におけるバター生産量が減少したこと、(2)オセアニア諸国での乳製品の供給不足などにより域外向け輸出が好調であったこと、(3)域内の市場価格が安定的に推移したこと−を背景に本年1月末時点と比べて9.9%減の20万1千トンとなった。

表2 EU15のバター生産量
(単位:千トン、%)
資料:ZMP
 注:各年1〜7月の数値。

●●●好調なポーランドの乳製品輸出●●●

 ポーランドの酪農部門については、EU加盟以前には、EUの衛生条件などからEU各国との競合には耐えられないものと見込まれていた。しかし現実には、特にドイツ、イタリア向けのバター輸出が大きく増加するなど、EU域内からの需要の高まりを受け、同国における乳業メーカーの53%に当たる210社からEU域内へ乳製品の輸出が行われている。同国の乳業協同組合によると、ポーランドの乳製品輸出については、チーズが約37%、バターミルクパウダーが約47%のシェアを占め、2004年の乳製品輸出額は前年と比べて23.2%増の3億2,400万ユーロ(約444億円:1ユーロ=137円)に達するものと見込まれている。


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