特別レポート

フランスの食品品質証明制度について II
−品質適合認証制度および有機農産物の制度の概要−

農林漁業信用基金参与 前FAO日本事務所長 高橋 梯二

1 はじめに

 11月号ではフランスの公的食品品質証明制度および、ラベルルージュについての説明を行ったが、今月号では畜産物に適用が多い品質適合認証制度に加え、有機農産物制度についても説明したい。

 品質適合認証制度の対象となる産品は、牛海綿状脳症(BSE)の発生後急速に消費量が伸び、今ではラベルルージュ産品をはるかにしのぐ年間54億ユーロ(約7,400億円、1ユーロ=137円)の販売額となっている。有機農産物についてもEU加盟国での消費が最近急速に伸びてきており、フランスでは、販売額が1997年に5億ユーロ(約685億円)であったものが、2001年には倍増して10億ユーロ(約1,370億円)となっている。

 これらの品質適合認証産品および有機農産物は、美味であることや高品質であることを証明するものではないが、食品の安全性やより自然な生産・飼育方法、さらには環境保護や動物福祉について配慮した生産基準に基づいて生産されたことを証明するものであり、最近の消費者の食品に対する要求に答えるものとして評価されていると思われる。

2 品質適合認証制度

(1)品質適合認証制度の定義と適用産品

 
  フランスの品質適合認証ロゴマークの一例
 

 品質適合認証制度は、1990年に創設された食品品質証明制度である。1994年に「農産物および食料品の品質証明に関する法律」によって、また、それに伴う消費法典の改正によってラベルルージュとともに再整理された。

 消費法典第L115−23条は、品質適合認証(certification de conformite de produits)の定義を以下のように定めている。

「品質適合認証は、食品および食品以外の加工されていない農産物が、生産、加工または、調製において、あるいは、同法典第L115−23−1条第2文の規定により地理上の表示が登録(注:EUの地理的表示保護への登録)されている原産地のあるものについては、必要な場合は原産地について一定の特徴を有していることまたは、前もって定められた生産基準に従っていることを証明する。」

 品質適合認証は、ラベルルージュと同様、認証機関によって発行される。なお、政府の承認が必要なのは地理的表示があるもののみであり、それ以外の品質適合認証は認定機関の認定のみで足りることになっている。ただ、この認定に当たっては生産基準について「ラベルおよび認証全国委員会」の確認が必要である。

 品質適合認証に登録する産品を申請できる者については法律上制限がなく、生産者や流通業者の集団のほか、一個人や一企業であっても品質適合認証に産品を登録することができる。この点が原産地呼称制度やラベルルージュ制度と異なる点である。

 品質適合認証は、ラベルルージュ産品には適用にならないことは当然として、原産地呼称、VDQSワイン(原産地呼称ワインの一種)、ヴァン・ド・ペイの産品にも適用できない。また、EUの地理的表示保護および伝統的特産品保証に登録できるが、原産地呼称保護には登録できない。

 品質適合認証制度にはラベルルージュのような統一的なサイン(ロゴマーク)は定められていないが、認証機関は知的所有権法典第L715−1条にいう証明に関する集団商標として特別に定める別のサインの登録ができる。

 2003年1月現在で299の品質適合認証産品があるが、畜産物が多く、肉類が全体の37%、家きんが26%、豚肉加工品が4%、乳製品が2%を占めている。一方、植物産品は24%である。品質適合認証は、新しい制度であるが、急速に普及しており、その消費額はラベルルージュを超え、2001年で54億ユーロ(約7,400億円)となっている(ラベルルージュ35億ユーロ(約4,795億円))。

(2)品質適合の認証手続き

 品質適合の認証手続きは、主として1996年3月12日付け「食品および非食品・未加工農産物の証明に関する政令」に定められており、概要は以下の通りである。

 品質適合認証産品の生産基準は、ラベルおよび認証全国委員会の事務局に提出されるが、生産基準には以下の事項が含まれていなければならない。

・申請者の確認書類

・産品の正確な名称

・産品の特徴または認証を可能とするあらかじめ定められた規則および管理の方法

・表示のモデル

 ラベルおよび認証全国委員会の確認(verification)の前に、生産基準は公開の協議を行うこととされており、協議の広告は官報に掲載される。意見は広告の日から2カ月以内に書面でラベルおよび認証全国委員会の事務局に提出される。

 生産基準についてラベルおよび認証全国委員会の確認後の賛意がなければ、認証機関は、品質適合認証を行わない。

 ただし、地理的な原産を証明する品質適合認証は、認証機関の同意に加え、生産基準の政府の承認がなければならない。この政府の承認は、ラベルおよび認証全国委員会の意見に基づき、農業、食品および消費を担当する省庁の共同の省令によってなされる。

(3)品質適合認証の性格と意義

 品質適合認証は比較的新しい制度であり、ラベルルージュと異なり、原則として、政府の承認の必要がなく、ラベルおよび認証全国委員会による生産基準の確認があればよいことになっている。従って、手続きも簡便でより早いとされている。

 また、品質適合認証が原産地呼称やラベルルージュと大きく異なる点は、申請者が生産者の集団に限定しておらず、一個人、一企業でも行えることとしたことである。

 さらに、品質に関しては、ラベルルージュのように同種のほかの産品に比較して高品質でなければならないという条件はなく、ただ、生産基準に示された生産が行われ、それによる特徴があればよいとされている。

 従って、従来の食品品質証明制度に比べ、より簡便な制度ということもあり、急速に普及した。また、品質について特別の条件がないが、安全な食品の提供という点にも重点が置かれ、BSEなどの食品安全問題の発生を契機として流通企業などの安全を強調した販売戦略に利用されていることも急速な普及の一因であろう。

 原産地呼称は産地の自然条件と人的要素による産品の特徴、ラベルルージュは同種のほかの産品と比較して高品質という品質上の基準があるのに対し、品質適合認証は、このようなものがなく、現在のところ安全な食品に傾斜しているが、今後公的な食品品質証明制度の中でどのような位置づけになるのか発展を見守っていかなければならない。

品質適合認証の認証数の推移
(単位:件)

資料:CEPRAL


品質適合認証産品の生産量
(単位:トン)

資料:フランス農業漁業省

3 有機農産物

(1)有機農産物の制度の設立

 
  フランスの有機農産物ロゴマーク
   

 有機農業は、ヨーロッパでは20世紀初頭から始められていた。その流れは三つあるといわれ、第一はドイツのルドルフ・スタイナー(Rudolf Steiner)の発想から生まれたバイオ・ダイナミック農業(Biodynamic)、第二はイギリスのアルバート・ハワード(Albert Howard)の理論から発展した有機農業(Organic farming)、第三は、ハンス・ピーター・ラッシュ(Hans-Peter Rush)およびハンス・ミューラー(Hans Muller)によってスイスで発展してきた生物学的農業(Biological agriculture)である。食料生産の拡大が必要であった1950年代、60年代は、有機農業はあまり重視されなかったが、1960年代後半から70年代にかけ環境問題が注目され始めると、ヨーロッパ各国のそれぞれの団体が独自の基準を作成していった。

 フランスの有機農産物については、1980年の「農業の方向付けに関する法律」によって、国としての制度が設立された。しかし、有機農業については、なお、各種の議論があり、生産基準を策定するための委員会が設立されたのが1983年で、生産基準が承認されたのは1986年になってからである。1988年には「農業経営の経済的、社会的環境への適応に関する法律」が制定され、有機農産物の名称は、承認された生産基準に従って生産された産品以外のものに使用してはならないとされたほか、加工・流通に関する規制も制定された。

 一方、EUでは、1980年代になると生産の過剰が深刻になり、共通農業政策(CAP)の予算もばく大なものになっていた。このような状況に対し、CAPの転換が模索された。1985年には農業構造の効率の改善に関する理事会規則(797/85)が策定され、環境保全型農業の促進、山岳地域などの条件不利地域の定着化などが推進された(アンドリーセン副委員長改革)。また、1987年には、農業構造の効率の改善に関する理事会規則が改定され、セットアサイド(休耕)の推進により、生産を20%減少させるいわゆる粗放化政策が打ち出された。さらに、1991年には、マクシャリー計画により、一連の理事会規則が改正され、環境保全型農業の奨励措置の拡大、支持価格の大幅な引き下げとセットアサイドの義務付けに伴う作付け面積の減少を要件とした直接所得補償の導入などが実施された。

 有機農業は、これらEUの一連のCAPの方向転換に沿う農業でもあり、EU各国で有機農業を国の制度として取り入れていった。

 1987年に発効したEC単一議定書により、1992年末を目途に域内市場を達成することとなったが、有機農業についても各国ばらばらの規制を調和させる必要があった。そこで1991年にECは、畜産を除く農業についての有機農業に関する理事会規則(EEC/2092/91)を制定した。

注:EU規則の法的性格
EUの規則(regulation)はそのまま加盟国で適用される法令であり、指令(directive)は、加盟国の法令を指令に従って整備すべきことを定めた法令である。


 以後、フランスを含めEU加盟国は有機農業についてはこのEU規則に従うこととなった。また、有機畜産については1999年に理事会規則(1999年7月19日付けEC/1804/1999)が制定され、EU規則は畜産物を含めた総合的なものとなった。

 なお、EUには環境保全型農業の推進のための補助制度があり、有機農業に対してはEUと加盟国の分担で補助金を支給することになっている。フランスではこの制度により有機農業への転換に対して補助金が支給されている。

(2)有機農業の認定

 有機産品の生産の手続きとしては、有機農産物および有機加工食品の生産を行おうとする生産者は、その活動を県の農林担当部局(DDAF)に通知しなければならない。また、生産物を有機産品として販売する場合は、認証機関の認証を受け、この機関の監督を受けなければならない。2004年現在、フランスには6つの認証機関があり、それらは、ECOCERT, Qualite-France, Ulase, Agrocert, Certipaq, およびAclaveである。

 これらの認証機関は、EUが認めたフランスの認定機関であるフランス認証委員会(Comite Francais d’Accre ditation(COFRAC)から認証され、かつ、フランス政府から同意を得ている機関である。また、これらの認証機関はEU規則に基づき最低年1回農場などで実施する検査機関としての役割も持っている。

(3)有機農業規則の概要

a 基本概念

 有機農業は、化学合成物質の使用を行わない農業である。これと関連して遺伝子組み換え物質(GMO)の使用も禁止される。有機農業は自然有機産物の地域内循環、栽培の輪作、家畜の自然な飼育(bien-etre animal)、を基本とし、土壌に存在する生きた有機物の均衡を目指す。

 EU規則の対象は、加工していない農産物(穀物、野菜など)、家畜、加工していない畜産物(牛乳、卵など)、植物または動物由来の複数の原材料からなる食品(パン、ビスケット、食肉、チーズなど)である。

b 植物栽培の有機生産基準

 土壌の肥沃度と生物学的活性は、輪作計画の下で、まめ科作物、緑肥作物または深根作物の栽培によって、維持され、増強されなければならない。EU規則(EEC/2092/91、以下(3)中では同様)別表(Annex)IのPart Bで定められた有機畜産から得られる副産物も一定の限度以下で使用できる(年間1ヘクタール当たり窒素170キログラム)。

 適切な肥沃度と土壌条件を確保するために必要な場合には、化学合成以外の方法で得られる主として天然のもので比較的溶けにくいミネラルであって、EU規則別表II, Part Aのリストにあるものを肥料として用いることができる。

 作物の病害虫防除は、できる限り防除剤を使用しないで行われなければならない。防除は、第1には、抵抗性および耐性のある品種の選択、適切な輪作の実施、機械による防除、燃焼除草、天敵の利用によって行われる。しかし、緊急の場合は、一定の条件の下で、EU規則別表II, Part Bにある防除剤を使用することができる。この防除剤は4分類となっており、第1は動物または植物由来のもの、第2は微生物をベースとするもの、第3はわな(トラップ)などに使われるもの、第4はEU規則制定前に有機農業の中で伝統的に使われていたものである。

 最低転換期間は、単年作物にあっては2年間、永年作物にあっては3年間である。

 なお、有機農産物は、また、一定の条件で食用の野草植物にも適用される。

c 畜産物の有機生産基準

 有機畜産についてはEU各規則別表IのPart Bに定められているが、加盟各国は、より厳しい基準を設けることができることになっており、フランスではこれに従って、追加的な生産基準(cahier des charges)が定められている。

 有機畜産の基本概念は、家畜と土地との不可分性であり、土地(農地)のない有機畜産は認められない。家畜が自由に動ける広さの土地が確保されなければならず、単位面積当たりの家畜頭数も制限される。

 同一農場における有機畜産と従来型の畜産が混在しないことが原則である。しかし、並存する場合は、必要な措置をとり、両者が混同しないようにしなければならない。

 EU規則別表IのPart Bは、転換期間と家畜の系統について定めている。転換期間には、農地の転換期間と家畜の転換期間がある。家畜の系統は、その土地の環境によく適応し、病害に対する抵抗性のあるものが選定されなければならない。家畜の農場への移入は、原則として有機畜産からのものでなければならず、終始有機畜産基準に基づき飼育されなければならない。

 飼料は、有機生産されたものに限られており、できるだけその農場で生産される飼料で飼育されなければならない。また、原則として天然のものでなければならず、飼料の構成、原材料、その他の物質について詳細な基準が作成される。

 家畜の疾病については、予防を中心としなければならない。抵抗性のある系統の選定、抵抗性を高める飼育方法の実施、高品質の飼料の供与、適切な家畜密度の確保がなされなければならない。

 病気が発生したときは、残留が生じる抗生物質や逆症療法(allopathiques)による治療よりは、自然の治療、たとえば植物治療(phytothe rapeutiques)や類似療法(home opatiques)を重点としなければならない。しかし、緊急の場合は、一定の条件の下で、抗生物質の使用や逆症療法を行うことができる。成長ホルモンや繁殖をコントロールする物質の使用は禁止される。

 動物福祉基準があり、断尾、切歯、くちばしの切断、除角は、許可を必要とする。つなぎ飼いは禁止される。畜舎の条件は、家畜の精神と行動様式に関する必要性を満たすものでなければならない。畜舎についての厳格な基準が定められる。また、移送は家畜のストレスを少なくするようにしなければならない。

 なお、フランスの追加的規則では、以下のような条件を補足的な生産基準として課している。

・2008年までにその経営体のすべての飼育家畜を有機農業に転換させること

・定められた一定の割合以上で当該農場産の飼料を与えること

・治療の回数を制限すること

・畜舎の大きさに関する厳しい規制を導入すること

d 有機加工食品に関する基準

 植物加工食品の原材料の70%以上は、有機農産物でなければならない。

 また、有機農産物でない原料農産物はEU規則で認められたものでなければならない。それは、原則として有機農産物としてEU域内で調達できないものである。ただし、入手が困難な場合は、一時的な例外が設けられる。この原材料は、EU規則別表VIのPart Cに記載されている。不正を防ぐため、有機農法によって得られた原材料と従来型の農法で得られた同種類の原材料の混合は禁止されている。

 EU規則では、農業からのものでない原材料(たとえば、添加物、香料、水、塩、微生物、ミネラル)の使用が完全には禁止されていないが、その使用は厳しく制限されている。加工補助材についても同様である。EU規則別表VIのPart A,Bに使用が認められる物質が記載されている。また、GMOの使用が禁止されている。

 有機農産物の原材料の加工は、規則で認められた方法以外の方法で行われてはならない。また、放射線照射を行ってはならない。

 畜産物加工品については、EU規則では定められておらず、フランスの生産基準に従わなければならない。

e 表示

 有機農産物・食料品の表示は、有機農業による農産物および畜産物ならびに原材料の95%超が有機農産物である加工品については、有機農産物・加工品であることの表示ができる。有機の原材料が95%以下、70%超である加工品については有機の表示はできないが、「X%は有機農業によって作られたものである。」ことを表示できる。有機の原材料が70%未満の加工品は、有機の表示は一切できない。

 以上のほか、有機農業への転換期間で得られた農産物および転換期間で得られた農産物一種類でできた加工品については、転換期間有機であることの表示ができる。

f 流通

 有機農産物・食品の卸売業者および小売業者への輸送に当たっては、有機産品でないものの混入を防ぐため、閉じた梱包を行わなければならない。また、梱包の表面には、生産者と加工業者または輸入業者の名前と住所、産品の名前を記載し、有機農産物であることを明記しなければならない。

 産品を受領した者は、梱包が閉じているかどうか、規則通り表示されているかどうかを確認し、産品受領に関する会計書類に記載しなければならない。また、疑いがある場合は、有機産品として販売してはならない。

g 検査

 フランスにおける有機農産物の生産、加工、輸入についての検査は、以下のようなEU規則に従って行われる。

 加盟国は、指名公的機関または認可民間検査機関による検査制度を確立しなければならない。民間検査機関による場合は、加盟国は、特定の機関を認可し、監督する公的機関を指名しなければならない。また、この公的機関は、民間の検査機関がEUのEN45011またはISO65の基準を満たしているかどうか確認しなければならない。

 加盟国は、特別検査計画を策定しなければならない。EU規則別表IIIに特別検査計画の詳細な最低検査基準が定められている。

 生産者と検査機関は有機農業の事業計画を策定しなければならない。それには、生産および貯蔵場所、収穫農地、施肥計画、加工場などを明らかにしておかなければならない。この事業計画が策定された後、生産者は、毎年区画ごとの生産計画を検査機関に通知しなければならない。

 最大限のトレーサビリティを確保するため、詳細な会計処理がなされなければならない。有機畜産の場合は、家畜の系統、家畜の出入、治療歴、家畜のへい死などを記録した家畜群管理をしなければならない。

 有機生産しているものと同じ作物または同じ系統の動物で有機生産によらないものは同じ農場内で生産されてはならない。

 検査機関は、少なくとも年に一度は検査しなければならない。また、事前通知なしに農場を訪問できる。

h 輸入

 第三国からの有機産品の輸入については、第三国で適用になっている有機農業基準がEUのものと同等であると認められた場合のみ輸入が可能である。輸出国の基準がEUのものと同等であるかは、欧州委員会が調査を行い、生産物に係る基準のみでなく、管理の有効性についても調査する。このようにして同等とみなされれば、許可された国としてEUのリストに掲載される。この国からの有機農産物はフランスを含めEU域内を自由に移動できる。

 現在、リストに掲載されている国は、アルゼンチン、オーストラリア、イスラエルおよびスイスなどである。

 また、輸入できる産品は、輸出国の検査証明書がなければならない。

 なお、2005年までの措置として、EUのリストにない国からの有機産品について、加盟国が輸入許可を与えることができる措置もとられている。フランスでは、2004年8月にこれに関する政令が定められ、フランス有機農業振興機関(Agence francaise pour le de veloppement et la promotion de l’agriculture biologique(agence bio)に輸入業務を行うことを通知した業者または認証機関に輸入業務を通知した業者のみがフランス農業漁業省に対して輸入申請ができることとした。同省は輸入許可申請を受け、審査の上、許可する場合は、12カ月間有効な許可を申請業者に与えることとした。

(4)有機農産物の普及

 フランスは、国として有機農産物制度を作ったのは早かったが、現在、イギリス、ドイツ、イタリアなどよりは栽培面積が少ない。しかし、近年、消費者の食品の安全に対する不安、家畜の過度の集約的な飼育に対する懸念、環境保全に対する配慮などを背景に有機農産物・食品の生産と需要が急速に伸びてきている。2001年現在で、フランスの農地の1.4%に当たる41万9,750ヘクタールが有機農産物の生産に充てられている。有機農業農地としては草地が多いのは当然として、穀物、ブドウなどが多い。また、図にあるように、南部地域において有機農業の普及率が高い。

フランスの有機農業
資料:Donne es Ge nerales 2001 フランス農業漁業省

フランスの作物別有機農業の面積
(単位:ha)
資料:Donne es Ge nerales 2001 フランス農業漁業省

フランスの有機農業による飼育家畜頭羽数
(単位:頭、羽)
資料:Donne es Ge nerales 2001 フランス農業漁業省

EU加盟国の有機農業面積および経営体数
資料:欧州委員会
資料:欧州委員会

県別有機農業面積の割合
資料:Donne es Ge enerales 2001 フランス農業漁業省
 注:有機農業面積には転換面積を含む

(5)フランスの有機農産物政策

 有機農業は、EUの農産物過剰対策、粗放農業、環境保全型農業の推進に適合する農業であること、また、より自然で、動物の福祉にも配慮し、環境にもやさしいいわゆる合理農業(agriculture raisonne e)にも呼応しているものであること、さらに、消費者の食品の安全やいわゆる食品の社会的品質への要求の高まりに対応した生産方法の一つであることなどを考慮し、現在、フランスにおいては政策として強力に推進されている。政府は、現在、有機農産物の需要が年間約20%で急速に増加していることに鑑み、1997年に有機農産物発展計画を作成した(1997年から2005年まで)。この計画によると2005年までに有機農業面積を100万ヘクタールに、有機農業経営体を2万5,000戸に拡大することを目標にしており、2001年に比較するとほぼ倍増の計画である。  

注:合理農業は、英語では「integrated farming」、フランス語では「agriculture raisone e」といわれる。
 
   フランスでは2002年に法制化された(2002年4月25日付け政令)。この法律によると、合理農業とは農業生産全過程において、環境、食品安全、農業労働者の健康と安全および動物福祉に配慮した生産技術と生産方法を用い、環境を重視した持続可能な農業を実施することである。

 
   具体的に要求される事項としては、(1)肥料、残さ、廃棄物の適切な管理、(2)適切な手段による栽培防除と家畜衛生対策の実施、(3)土壌の保全と汚染の防止に配慮した適切な生産方法、(4)水資源の節約と適正使用、(5)食品衛生に関する規則の順守、(6)家畜の栄養と家畜福祉への配慮、(7)景観の保全と生物資源の多様性の維持への貢献などである。
 
   制度としては、合理農業についての生産方法の指針を国として策定し、認証機関が農業者からの申請に基づいて、政府の指針に照らしてその生産基準が妥当と認める場合に5年間有効の認証を付与することである。また、2004年の政令によって、この認証を受けた者以外は、その生産物の販売や宣伝において「合理農業」という表示を用いることができず、また、合理農業の生産物についてはトレーサビリティが義務付けられることとなった。

 

4 山岳地域産品

 過疎化が進む山岳地域の経済を維持する一助として、山岳地域で生産され、一定の条件を満たす産品についてワイン以外は「山岳」という表示を付すことができる制度が1985年に作られた(1985年1月9日付け法律、最終改正1999年7月9日付け農業の方向付けに関する法律)。

 山岳表示ができる産品は、生産、飼育、肥育、調製、加工などのすべての工程が山岳地域で行われなければならない。また原材料も山岳地域で作られたものでなければならない。ただし、原材料や家畜に与える穀物や油脂類などについては例外規定がある。また理由がある場合はと畜場や調製の場所が山岳地域でなくてもよいことになっている。

 山岳地域産品は、個人、企業あるいはそれらの集団など、いずれも申請が可能であり、高品質食品地域委員会(Commission Re gionale des Produits Alimentaires de Qualite(CORPAQ))の意見に基づき、知事が承認することになっている。この承認手続きは、2000年12月15日付け政令で定められた。

5 おわりに

 11月号と本月号でフランスの公的品質証明制度について原産地呼称制度を除いて説明した。品質証明制度の基本は、産品の生産過程を規制し、公的機関あるいは第三者機関が介入することである。一方、食品の安全に関する現在の制度の基本は出来上がった製品のチェックである。しかし、最近、消費者は、生産や流通がどのように行われているか分からなければ、食品の安全や安心が確保できないとの要求を強めている。さらに、動物福祉や環境保護に配慮した産品への消費者の関心も強まっているが、これらの要求を確保するには生産段階における規制が必要になってくる。これらの要求は、今まで生産過程に公的機関が介入するのは生産者の自由な発想と競争を阻害するとしてきたアメリカの農業・食品産業のあり方にも大きな影響を及ぼしつつある。このような意味で100年の歴史を持つフランスの公的食品品質証明制度の手法が今後ますます注目されるものと考えられる。

(参考資料)

・Produits Bio Mode d’Emploi、フランス農業漁業省

・フランス消費法典 LivreI、Titre1,Chapitre V, Section II及びIII

・フランス農業漁業省ホームページ

・Council Regulation No2029/91 of 24 June 1991


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