ポルトガル産の牛肉など、輸出再開へ


ポルトガル、BSE対策を確実に実行

 EUのフードチェーン・家畜衛生常設委員会は9月21日、1998年から実施しているポルトガルからの生きた牛、牛肉、牛肉製品などの輸出禁止措置を解除するという欧州委員会の提案を承認した。

 今回の承認の理由として、ポルトガルでは、EU規則(EC/999/2001)に基づく牛海綿状脳症(BSE)対策を確実に実行していることを挙げている。2004年2月に行われた欧州委員会食品獣医事務局(FVO)によるBSE対策の実施状況についての検査結果報告では、1疫学的なサーベイランスの実施、2特定危険部位(SRM)除去、3家畜への動物性たんぱく質飼料の全面給与禁止(フィードバン)が完全に実施されていることを示している。

 また、ポルトガルでのBSE発生は確実に減少していることも挙げている。2003年9月1日から2004年8月31日の1年間においては、103件の事例が確認されており、この件数を、国際獣疫事務局(OIE)によるBSEの発生率に換算すると131.7頭となり、これはOIEの基準では「BSE中リスク国」(過去1年間において、24カ月齢以上の牛百万頭におけるBSEの発生率が200頭以下である国)となる。

1998年11月、ポルトガル産の牛肉などを輸出禁止

 ポルトガルでは、1998年にBSEの発生件数が増加し、また、同年に実施されたFVOの検査において、同国でのEU規則に基づいたBSE対策の実施内容に不備があることが判明した。このため欧州委員会は同年11月、同国からの生きた牛、牛の受精卵、牛肉、牛肉製品、ほ乳動物由来の肉骨粉やこれを含む飼料などの加盟国および第3国への輸出を禁止した(委員会決定98/653/EC)。 

 なお、ポルトガルにおいては、1990年に初めてBSE患畜の存在が確認されており、EU加盟国の中では、イギリス、アイルランドに続き、BSEが確認された3番目の国である。欧州委員会によるBSEの地理的リスク(GBR:Geographical BSE Risk)では、イギリスとともにレベルW(BSEに感染した牛が高いレベルで確認されている)に分類されている。

輸出再開の道が一旦は開けたが...

 ポルトガルからの輸出禁止措置について、欧州委員会は2001年4月、生年月日に基づく輸出措置(DBES)による厳しい条件の下での輸出再開を許可する規則を制定した(委員会決定2001/376/EC)。この規則による条件は、1999年7月以降に生まれた牛で、と畜時に6カ月齢を超え30カ月齢未満の牛から生産された、骨を除去した牛肉であった。その後、2001年7月の委員会決定により、8月1日が輸出解禁日と設定された(委員会決定2001/577/EC)。

 しかし、欧州委員会の輸出解禁の決定手続きについて不備があるとフランス政府より欧州司法裁判所に訴えがあり、この訴えが、2003年5月に同裁判所により認められ、再開を認めた委員会決定2001/577/ECを、無効にするという判決が下っている。

 このため、ポルトガル産の牛肉の輸出は、この判決以降行うことができなくなった。ただし、委員会決定2001/577/EC以降上記判決が下るまでの間は、同国において、DBESに基づいた管理体制が整わなかったことから、輸出は行われていなかった。

イギリスを除く他の加盟国と同条件

 ポルトガルは、9月21日のフードチェーン・家畜衛生常設委員会の承認により、イギリスを除くほかのBSE発生加盟国と同じ条件で輸出再開となる(イギリスにはDBESの条件が存続)見込みである。

 今回のポルトガルからの輸出禁止措置解除について欧州委員会バーン委員(保健・消費者保護担当)は、「ポルトガルはBSE対策についてかなりの努力をした。その報いが輸出再開となった。私の任期の終了が近づいているが、EU全加盟国のBSEに対する取り組みの努力の効果により、牛肉に対する消費者の信頼回復を見ることができてうれしい」とコメントしている。


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