エコー画像を用いたアンガス種の改良  ● アルゼンチン


高品質なエコー画像撮影のため技術者を養成

 アルゼンチンアンガス協会(AAA)は、エコー画像を用いて牛肉の品質特性を測定する技師の資格認定講習会を、9月6〜10日に国内で初めて開催した。この講習会の目的は、アンガス種の種畜評価(ERA)プログラム注)の評価項目に対して、質の高いエコー画像を“エコー画像解析センター(CIIE)”に集積するために技術者を養成することにある。CIIEは本年3月に、国立農牧技術院(INTA)カステラール獣医農学研究センターとAAAが共同で設立したもので、エコー画像の解析自体はCIIEの技術者が行うことになっている。

 講習会は、理論、画像撮影実習、画像解析実習から構成され、受講料はAAA会員が1,125ドル(約12万円、1ドル=107円)、その他が1,250ドル(約13万4千円)とかなり高い料金設定となっているため、資格取得の有意性についてINTA担当者に質問したところ「技術習得希望者は2002年から自己費用で米国に行き、エコー画像撮影技術などを習得してきた。旅費などを含めた経費を考えれば費用面では安く、かつ技師として資格認定されればエコー画像撮影料を得ることができるため決して高いものとはならない」との回答であった。

 なおERAプログラム自体は1989年から開始され、これに基づいて種雄牛要覧が毎年取りまとめられているところである。

注)国内飼養のアンガス種を遺伝学的に評価することを目的に、AAAは1989年にINTAカステラール獣医学研究センター(当時)とERAプログラムに関する規定を定めた。

エコー画像の解析項目は4つ

 エコー画像の解析は、ERAプログラムの評価項目のうち以下の4項目に関連する部位で行われ、種畜が18カ月齢のときに撮影した鮮明な画像が要求される。

 なお4項目はともに、種雄牛の能力として後代(このプログラムでは産子が18カ月齢時)に得られるであろう期待値を、調査個体の全平均を基準値(±0.0)として、プラスまたはマイナスで表示することになっている。

(1) EGD−第12〜第13肋骨間の背脂肪の厚さをミリメートル単位で表す。

(2) EGC−臀部の脂肪の厚さをミリメートル単位で表す。

(3) AOB−第12〜第13肋骨間の最長筋断面積を平方センチメートル単位で表す。

(4) GI%−第12〜第13肋骨間の最長筋内における脂肪の割合をパーセンテージで表す。

将来、他の品種にもエコー画像解析技術を応用

 またCIIEの役割としては、(1)AAAが認定した技師によるエコー画像について、EGD、EGC、AOB、GI%の4項目を正確に解析し、生産者へ提供すること、(2)エコー画像から得るDEP(期待後代差(英語ではEDP))の精度を増すため、(遺伝子要因以外の)飼育環境などについて正確・確実に記録を残し提供していくことを生産者に指導すること(筆者注:外的要因を正確に除去し遺伝形質を端的に把握することが目的)、(3)CIIEが他の肉用牛品種について協力する場合、エコー画像により入手した肉質の特徴および品種・性別などにより修正が必要となる因子などからDEPの算出を可能とするため、正確な基礎データを作成し他の肉用牛生産者協会を支援すること−である。

 なお、この他のDEPの項目としては、出生時体重、18カ月齢換算時の体重・陰嚢周囲長・体高などがある。

 さらにAAAは、ERAプログラムの参加会員を対象に、種雄牛要覧に含まれない繁殖雌牛、育成種雄牛、育成雌牛、子牛(雌雄)などのDEPを提供することができるとしている。


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