季節的生乳生産農家が全体の2/3
デイリーオーストラリア(DA)はこのほど、干ばつの影響で依然厳しい経営環境に置かれている酪農家の経営の改善に役立てるため、豪州農業資源経済局(ABARE)に委託して、生乳生産期間で異なるタイプを持つ豪州の酪農家の生産性や利益率に関する調査を行った。
豪州では、気象条件、市場のニーズや、土地や飼料穀物、かんがい用水などのコストの違いによって、酪農家の年間を通した生乳生産時期が異なる。これには2つのタイプがあり、1つは春先に分娩させ牧草の生育に合せて生乳生産する者(季節的生乳生産農家)で、豪州の酪農家の3分の2がこのタイプに当てはまり、タスマニア州、ビクトリア(VIC)州、南オーストラリア州に多い。もう1つは1年間を通して生乳生産を行う者(通年生乳生産農家)で、これは主に飲用向け生乳を生産する地域でクインズランド州やニューサウスウェールズ(NSW)州北部、西オーストラリア州に多い。また、これらのタイプとやや異なり分娩時期を分ける者があり、これはNSW州リベリナ地方やVIC州北部のかんがい利用地域で顕著にみられる。なお、調査に当たっては、干ばつ前の2000/01年度や2001/02年度データを使用し資産に対する収益の額で上位25%と下位25%に区分して比較している。
上位と下位で農場利用度の差は約2倍
調査結果によると、収益性の高い酪農家と低い酪農家の最大の違いは、1ヘクタール当たりの平均生乳生産量であり、上位25%の1酪農家当たりの平均生乳生産量は下位25%の2倍に当たる。
DAではこれを「生産性が高い酪農家ほど、土地を有効に使っている」と評価している。季節的生乳生産農家の上位と下位の農場面積の差は大きくないが、上位は下位に比べ1ヘクタール当たりの乳牛飼養頭数が約2倍近くあり、さらに1頭当たりの生乳生産量では約1.4倍となっている。通年生乳生産農家では、農場面積は上位が下位に比べ約1.4倍となるが、同様に1ヘクタール当たりの乳牛飼養頭数は約2倍近くあり、1頭当たりの生乳生産量も約1.5倍ある。
間接費や補助飼料、かんがい用水も重要な要素
また、収益面をみると、両者とも上位は大幅な黒字に対し、下位は赤字となっている。DAはこの理由の1つとして諸経費の圧縮効果を挙げており、上位と下位では間接費の全生産費に占める割合が約2倍の差になっている。
また、補助飼料の給与は1ヘクタール当たりの生乳生産量の増加要因になっているが、必ずしも給与量が多いことが生産性の向上につながるとはとはいえず、DAでは「補助飼料を購入するより自分の農地で育てたほうが生産性が向上する」と指摘している。さらに、他の要因として、かんがい用水の利用を挙げており、上位の酪農家ほど利用度が高い結果となっている。
DAではこの調査結果について、生産性向上には「農場の規模ではなく管理のほうが重要な要素」と述べ、諸経費の削減で酪農家は赤字から黒字に転換できるとしている。しかし、「大きな負債を抱える酪農家は、危険が大きいので通年的生乳生産を採用することには十分な注意が必要である」と述べている。
生乳採算期間別酪農家生産性比較表
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注1:資産に対する収益の割合で上位25%と下位25%を区分
2:数値は2000/01年度と2001/02年度の酪農家ごとの平均 |
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