今年上半期の農業成長率は好調
フィリピン農務省農業統計局(BAS)が8月12日付で発表した、2004年上半期の農業統計によると、同国農業部門(水産含む)全体の85年の価格に換算した生産額は前年同期比6.61%増の成長を示した。
全体の成長率を引き上げている主な要因として、農業生産額の約半分を占める作物部門が好調であったことが挙げられる。中でも好調なのは米(同12.2%増)、トウモロコシ(14.1%増)、サトウキビ(18.3%増)で、政府はこれらの農業開発の目玉となる品目について、8月のドーハ開発アジェンダの枠組み合意文書で定める、途上国が定めることが可能な特別品目(SP)に指定したいとする意向を示している。
なお同国農務次官(WTO農業分野交渉団長)は8月、SP指定品目の拡大が今後の交渉における重要課題であるとして、SPを数品目に限定したいとする米国の発言に対し警戒感を表明していた。
家きんを含めた畜産部門の農業生産額全体に占める割合は27%で、今年第1四半期の成長率に比べると、わずかに減速した結果となった。家きんを除く畜産部門全体の生産額は前年同期比2%増、家きん部門は2.2%増加と、ともに堅調に推移している。
また農業生産額全体の成長率を押し上げる要因として水産養殖部門の伸び(同28.7%増)の影響も大きく、WTO枠組み合意文書により非農産品とされる品目に対する取り扱いに、国内水産養殖業者などからは不満の声が上がっている。
EPA協議では農産品の市場拡大を要望
現在同国とわが国の間で行われている経済連携協定(EPA)交渉では主に物品貿易の自由化に関し意見に隔たりがあるとされており、同国政府は日本に対し特に農産品(水産物含む)部門での市場開放を求めている。
8月中旬に新たに農務長官に就任したヤップ氏はこれまでの海外からの援助事業を見直し、国内農業振興政策との調整作業を行っているとされている。この意向を受けて、農務次官は29日から始まるEPA事務レベル協議で、日本が工業分野での市場アクセスの改善を求めるならその見返りとして農業分野での技術協力の充実を求めるとした。
具体的には日本で2006年5月から施行される予定の改正食品衛生法(昨年5月30日付公布)で示す食品中の薬剤残留規制(ポジティブリスト制の導入)に対し、フィリピン産農産物が規制強化に対応するための技術協力を求めたいとしている。
フィリピンから日本に輸入されている主な農産品は熱帯果物の他、水産品が多く、畜産関係では近隣諸国での鳥インフルエンザ発生の影響で、今年に入って日本からブロイラーに関する引き合いが増加している。このような中、同国のブロイラー生産者団体であるブロイラーインテグレーター協会(PABI)は、EPA協議を通じて一部鶏肉の市場開放に期待感を表明しており、農務省に対し家きん肉を市場開放要求品目に加えるよう要望している。それによると、骨付きもも肉と、その他の肉など(HS分類:0207.13〜14)について、関税率を0〜3%へ引き下げる要望とされる。同国の家きん肉輸出業者は今年の日本への家きん肉輸出は1千トンに達する見込みとしている。
アーリーハーベスト参加は来年1月から
一方、9月初めにジャカルタで開催されたASEAN経済閣僚会合の中で、ASEANと中国との自由貿易協定の枠組みの中での先行自由化(アーリーハーベスト)について、フィリピンは208品目の農産品(HS分類1〜8類)についての選定を終えた。ただし、中国側の品目はこの段階で未提示であり、国内生産者の反発もあって最終的な合意時期は不透明となっているものの同国は2005年1月1日からアーリーハーベストプログラムに参加することとなる。
同国は当初関税撤廃前倒し措置への不参加を表明していた。
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