農家収益が低下


◇絵でみる需給動向◇


 タイ農業協同組合省によると、2003年4月以降プラスを示していた農家収益は9月に入りマイナスに転じた。これは、生産費のうち、ひな価格が8月に比べ9月に低下したが、農家販売価格も大きく低下したためである。

図1 農家収益の推移(農家販売価格−生産費)

資料:タイ農業協同組合省


図2 ブロイラー生産費の推移

資料:タイ農業協同組合省


 農家販売価格の低下は、ブロイラー生産量が一定水準で維持された一方、中国産家きん肉の鳥インフルエンザウイルスの確認により一時輸入を停止していた日本の中国産鶏肉の輸入再開のためと考えられる。

図3 農家販売価格の推移

資料:タイ商務省

● ● ● タイ・中国FTAの鶏肉分野の準備始まる● ● ●

 タイは中国とアセアン(東南アジア諸国連合)のFTA(自由貿易協定)の枠組みの中で農産物についてアーリーハーベスト(関税撤廃の前倒し)協定を結んでおり、野菜と果物については既に実施されているが、ブロイラーについてもその準備がなされつつある。

 FTAの実施に当たっては、両国で合意された製品に関し、製造方法と衛生に関する(SPS:衛生植物検疫措置)基準が必要であり、中国側はタイの鶏肉製品の輸入に関連して、11月末に食品大手のチャロン・ポカパン(CP)グループの3工場を含む5工場の検査の申入れをタイ側に行っている。

 また協定の実施に当たっては、それぞれ国内の生産工場の登録が必要となるが、これまで中国の輸出向けの工場は限定されていたこともあり、その他の工場の登録作業は完了していない。

 タイのブロイラー企業は、中国への製品の輸出に関し、高付加価値製品での市場開拓に期待を寄せている。

● ● ● タイで家きんコレラの発生 ● ● ●

 11月中旬にタイのバンコク北部のナコンサワン県を中心に発生した家きんコレラは、約12万羽の被害を出している。これまでも冬場に向かう季節に家きんコレラが発生することはあっても、焼却等の適切な対策により被害の拡大は防がれてきたが、今回は、小規模の鶏生産者が家きんコレラによって死亡した鶏の死骸を処理費用の節約目的で河川や用水に捨てたため、水を介して産卵鶏に被害が拡大したものとされている。

 タイ畜産開発局(DLD)は、鶏の死骸を市価の75%で買取り、焼却することで感染の拡大を防止しようとしている。輸出向けのブロイラー企業への被害は今のところ報告されていないが、ブロイラー企業は資金の一部を提供し、事態の沈静化を進めることとしている。


元のページに戻る