EUの脱脂粉乳価格は、2003年6月以降緩やかに回復している。ドイツ市場価格情報センター(ZNP)によると、指標価格の1つであるドイツの工場渡し価格は、2003年5月は100キログラム当たり191.3ユーロ(約2万5,800円、1ユーロ=135円)であったが、その後上昇し12月には203.7ユーロ(2万7,500円)と2002年12月と同水準になった。輸出依存度の高いオランダの価格や、フランスの工場渡し価格もほぼ同様の値動きを示している。
● ● ● 域外向け輸出の大幅増や生産減が原因 ● ● ●この原因は、2003年前半におけるイラク戦争の勃発や全般的なユーロ高などの影響が懸念されたにもかかわらず、アルジェリアやインドネシアなど域外向け輸出が大幅に増加したことが挙げられる。2003年1月から9月までの脱脂粉乳の域外向け輸出量は、前年同期比65%増の約16万8千トンとなった。背景としては、2003年の脱脂粉乳の国際市況が前年よりも活発なことなどにある。また、2003年6月以降輸出が回復した全粉乳生産などに生乳が仕向けられた結果、生産量が減少していることも影響している。2003年6月から9月までの脱脂粉乳生産量は、前年同期比2.2%減の約34万7千トンとなった。 ● ● ● 価格の一層の回復には域外向け輸出がカギ ● ● ●脱脂粉乳の域内需要は、主要用途である子牛の飼料向けや食用向けが減退気味であることが伝えられている。一方、域外向け輸出は現在も順調であることが報告されているが、一時期米ドルなどに対して低下傾向であったユーロは、2003年11月以降再び上昇傾向となり、今後一層ユーロ高が進めば、農産物等の域外向け輸出に影響が出てくることが懸念されている。また、3月からは脱脂粉乳の通常の介入買い入れが行われることから、2003年12月には約19万8千トンあった介入在庫量は、再度増加することが見込まれる。このような状況からすると、域外向け輸出が今後のEUにおける脱脂粉乳価格の回復のカギを握っているとみられており、欧州委員会は輸出補助金引き上げなどの対応を迫られる可能性がある。 |
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