豚肉の民間在庫補助を発動


◇絵でみる需給動向◇


● ● ● 2002年に引き続き発動 ● ● ●

 欧州委員会は2003年12月19日、最近の豚肉の市場価格が下落しているため、昨年に引き続き豚肉の民間在庫補助(APS)の発動を決定した。この制度は、EU15カ国の豚枝肉卸売価格(市場参考価格)がEU規則に定められた基本価格(100キログラム当たり150.939ユーロ(約2万400円、1ユーロ=135円)の103%を下回り、この近い価格水準が継続すると見込まれる場合に適用される。この場合、一定期間豚肉を民間在庫として隔離することにより需給の改善を図るため、豚肉取引業者に対して助成金が支払われる。今回は、2003年12月22日からの在庫に適用され、単価、1契約当たりの最小数量は以下の通りとなっている。

 2003年12月の市場参考価格は、前年同月比8.2%安の100キログラム当たり114.9ユーロ(1万5,500円)となった(下図2参照)。


○ 単価
(単位:ユーロ/トン)
注:「ミドル」とは、ロースとベリーの一部で構成される部位

○ 1契約当たりの最小数量
  脱骨したもの・…10トン
  脱骨していないもの・…15トン

 豚肉流通業者は、契約在庫期間(3、4、5カ月)を定めて申請し、それが受理された後、その期間と部位の別に定められた助成単価を基に助成金が交付される。APSの対象となった豚肉は、保管期間が2カ月を経過した後であれば、契約在庫期間内であってもEU域外へ輸出することができることとなっており、また、契約終了後の販売先の制限は設けられていない。2002年のAPSの対象となった豚肉は約11万2千トンで、デンマーク産が4割以上を占めた。

● ● ● 発動の背景は域内牛肉消費の回復等 ● ● ●

 発動(価格下落)に至った背景には、(1)2000年末のEU域内で牛海綿状脳症(BSE)問題の再燃で落ち込んだ牛肉消費が回復傾向であること(2)BSE問題などで豚肉価格が高騰したことから、域内豚肉生産が増加したこと(3)2003年4月にEU最大の輸出先であるロシアが関税割当制度を導入したことなどから、域外向け豚肉輸出が減少したこと(2003年上半期の域外向け豚肉輸出量は、前年同期比3.0%減の約40万3千トン)−などが挙げられる。

● ● ● 2004年の価格は多少回復の見込み ● ● ●

 2004年のEUの豚肉価格は、今回のAPS発動や(1)飼養頭数の減少から2004年上半期の豚と畜頭数の減少が見込まれていること(2)2004年5月に加盟が予定されている中東欧等諸国への豚肉輸出増加の可能性があること−などから今後多少回復するとみられている。なお、業界関係者はロシア向け輸出について、2009年まで同国の関税割当制度は継続されるものの、2003年よりその割当数量が増加することを期待している。


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