米国のBSE問題に対するブラジル政府の対応


米国からの反すう動物や製品の輸入を停止

 ブラジル農務省は12月24日、米国でBSEの感染が疑われる牛が確認されたことを受け、同国からの反すう動物、反すう動物由来の製品および受精卵の輸入を停止した。なお、一定の温度で高熱処理された肥料原料用の骨粉、牛乳・乳製品、精液などについては輸入を認めるとしている。

 ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、米国からの生鮮牛肉(冷蔵、冷凍肉)輸入量(製品重量ベース)は、98年が4,295トン、99年が958トン、2000年が130トン、2001年が22トン、2002年以降は数トン、また、96年から2003年11月までの米国からの生体牛輸入頭数(累計)は、1,444頭となっている。

BSE対策として生体牛に関する訓令を公布

 さらに、ブラジル農務省は12月24日、BSE対策として訓令第18号(2003年12月15日付け)を公布した。なお、同訓令は、米国でBSEの感染牛が確認される以前に、BSEの発生国やBSE発生のリスクがある国から輸入された生体牛(牛または水牛)の取り扱いに関して規定されたものである。その概要は以下の通りである。

(1) BSEが発生した国またはBSE発生のリスクがある国から輸入された牛または水牛のと畜を禁じる。

(2) 衛生当局の許可なく、(1)の家畜を他の飼育場に販売、移動することを禁じる。

(3) (1)の家畜が死亡した場合、衛生当局に報告し、許可を得た後、処分することができる。

(4) (1)の家畜が、繁殖能力を失った場合、衛生当局の監視の下、殺処分するものとする。

(5) (4)により殺処分された家畜は政府による補償の対象となる。ただし、本訓令の公布後に、BSEが発生した国またはBSE発生のリスクがある国から輸入された家畜は補償の対象外とする。

新たな市場獲得は家畜衛生対策の強化がカギ

 米国のBSE問題に対するブラジル政府の反応として、ロドリゲス農相は12月24日、同国は今回の問題を契機に、牛肉だけではなく鶏肉や豚肉についても新たな市場を獲得できる可能性があることを示唆した。しかし、その一方で、食肉輸入国が防疫対策を強化すると見込まれることから、新市場の獲得はさらに困難になるとみており、政府と民間部門が連携して家畜衛生対策を強化する必要性があると訴えた。

 また、業界の反応として、ブラジル牛肉輸出業協会(ABIEC)のプラチニデモラエス会長(前農相)は、牛肉輸出を拡大するには家畜衛生対策への投資が前提となることから、米国のBSE問題がただちに輸出増加につながるわけではないとした上で、業界は輸出量の増加よりも輸出製品の高付加価値化に重点を置くべきであると指摘した。

牛肉輸出市場の開拓を積極的に行う方針

 一方、ブラジル農務省は1月5日、米国のBSE問題を契機に、民間部門と連携してブラジル産牛肉輸出市場の開拓を積極的に行うことを表明した。農務省によると、その一環として、同省で行われた牛肉関連産業の代表者を集めた協議会において、(1)BSEを予防するための技術指導要領の作成(2)ブラジル産牛肉の優位性を外国市場にアピールするためのマーケティング戦略の立案(3)家畜衛生に関する戦略の立案と予算措置−について検討する作業部会がそれぞれ結成された。これらの検討結果は1月8日までに、ロドリゲス農相に提出され、その上で新たな市場の開拓に必要な政府の指針が定められるとしている。

 また、農相は同協議会の席上、家畜衛生対策関連予算の増額を要求していること、今年の牛肉輸出量は前年比15%増と見込まれること、植物性飼料の需要増加に伴い大豆の輸出増加が見込まれることなどのコメントを併せて発表した。


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